一つのサービスを育てながら
マクロな領域にデザインで貢献できるという醍醐味

様々なキャリアデザインを実現しているクリエイターの皆さんに話を聞きながら、クリエイターの新しいキャリアデザインのあり方を考える「クリエイターインタビュー」。

今回お話を伺ったのは、Web制作会社や起業を経験されたのち、CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」を提供する事業会社、株式会社プレイドに入社したデザイナーの鈴木健一さん。

入社して約1年が経った鈴木さんに、事業会社で一つのプロダクトを育てることのやりがいや面白さ、事業会社で働き始めてから変化したことなどを聞いてみました。

鈴木 健一(すずき けんいち)さん

株式会社プレイド
CDO(Chief Design Officer)

マークアップエンジニア、Webデザイナーを経て、2006年より株式会社エフアイシーシーにてブランドサイトのWebデザイン/ディレクション業務に従事。2014年にアプリやサービスのUXデザインを専門に行う株式会社スタンダードを設立。2018年よりプレイドに入社し、UIデザインなどを担当している。2019年7月より同社のCDOに就任。

 

UIデザインを軸に組織作りや採用プロセス組み立てにも携わるデザイナー

―プレイドに入社されてから1年ちょっと経ったとお聞きしていますが、今はどんなお仕事をされているんですか?

プレイドは「KARTE」というプロダクトを提供しています。これはWebサイトやアプリを訪れたユーザーの行動や感情をリアルタイムに可視化することで、一人一人に最適なCX(顧客体験)の設計を支援するプロダクトです。

鈴木さん

私は主にこのプロダクトのUIデザイン、具体的には新しい画面の設計、既存画面の改善などに関わっています。その他、デザイン部門の責任者として新しいメンバーのアサインや採用プロセスなどにも携わらせてもらっています。

鈴木さん

―デザイナー部門の規模はどのくらいですか?

兼務も含めてちょうど10名ですね。人数が増えてきてデザイナー同士が連携する必要が出てきたため、チーム作りや協業のためのデザインシステムの構築を試行錯誤しながら取り組んでいます。

鈴木さん

 

個人で作ったサービスがきっかけで、憧れの会社へ転職

―そうなんですね。鈴木さんとプレイドとの出会いも知りたいのですが、その前にざっとデザイナーとしての経歴を教えていただけますか?

実は、まったく別の業界からのキャリアチェンジで、初めてデザインに携わったのはマークアップエンジニアとしてでした。

経験がなかったため派遣スタッフとしてチャレンジしましたが、そのまま派遣先の制作会社に就職し、Webデザインも行うようになって。1年ほど経験を積んだ頃、個人的に憧れていたエフアイシーシーへ転職しました。

鈴木さん

―憧れの企業に入れるなんて凄いですね!自分からエントリーして転職されたのですか?

ありがたいことに声を掛けてもらいました。当時個人でつくったサービスを公開していたんですが、それを見て連絡をいただいたんです。

鈴木さん

―凄い!クリエイティブの腕が認められたんですね。

「まさか連絡が来るとは」と思いながら、面談後に採用していただきました。

鈴木さん

 

起業した会社の取引先として、プレイドと出会う

エフアイシーシーでは受託でのWebサイト制作をメインでキャリアを積んでいたのですが、その中で自社サービスに携わる機会が何度かありました。

そのうち、広告的なWebサイトではなくて、サービスとして使われるものにデザインでコミットすることの面白さを感じるようになって、スマホアプリやWebサービスのUIデザインを専門とする株式会社スタンダードを立ち上げたのです。

鈴木さん


―新しいサービスに携わることに魅力を感じて、サービスのデザイン専門の会社を作ってしまったんですね。

そうなんです。そして、プレイドとは取引先の一つとして出会いました。

鈴木さん

ーああ、最初は受発注の関係だったんですね!

はい。そのためKARTEにはベータ版のデザインから関わっているんですよ。とても蜜に携わらせてもらって、週2日はプレイドに通いながら4年ほどパートナーとして仕事をさせてもらいました。

鈴木さん

―その後、プレイドさんから声をかけてもらった感じですか?

そうですね。ちょうどプレイドのサービスやスピード感、人に魅力を感じていたタイミングだったので、声をかけてもらった時は純粋に凄くうれしかったですね。

鈴木さん

―ご自身で会社を経営されている時で、プレイドに入社することに迷いはありませんでしたか?

クライアントワークを続けたい思いもあったので、正直迷いました。でも、「現職を兼任しながらでもいい」と言ってもらえたこともあり、入社することにしました。

鈴木さん

―じゃあ今もご自身の会社は続けられている?

そうですね、細々とですが活動させてもらっています。

鈴木さん

 

プロダクトを取り巻くマクロな領域にデザインでコミットできる

ープレイドに入社されて、一つのプロダクトだけに携わることになるのは初めてだと思うのですが、どんな気づきがありましたか?

デザインが関われる領域が圧倒的に広がりました。これまでは受発注の立場での仕事だったので、発注する側はデザイナーに依頼したい範囲が明確だったんですよね。

それに対して、一つのプロダクトに入り込むと、デザインが貢献できる領域が他にもあることがわかったんです。

鈴木さん

―具体的にはどんな領域ですか?

たとえば、製品の中の一つの機能だけでなく、その製品を多くの人に知ってもらうためのメディアだったり、プロダクトを一緒に育てていく仲間を増やすための採用だったり、会社を対外的にどう見せていくのかというブランディングの観点だったり、そういう部分に対してもデザインで貢献していけるというのが、実際にやってみて気づいた一つのポイントですね。

鈴木さん

―プロダクトのミクロな部分だけでなく、マクロな部分やプロダクトの周辺にある領域も含めて、チャレンジできる機会が増えたんですね。

そうですね。作って終わりではなくて、作ってユーザーに使ってもらって改善していくサイクルがあるので、その流れに合わせてデザイナー側の関わる領域も広がっていくのが面白いところだなと思います。

鈴木さん


―逆に難しい部分はありますか?

これは企業によると思いますが、プレイドはトップダウンというよりも比較的フラットな組織なので、デザインに対して色々な方向からフィードバックがもらえるんです。

そういう状況の中で意思決定をしていくために、密なコミュニケーションをとったり、組織の中で共通認識を作っていくことがとても大切で。

自分も会社をやっていましたが、メンバー個人個人がそれぞれクライアントワークに入る形態だったため、組織作りについては今まさに試行錯誤しながらチャレンジしているところです。

鈴木さん

 

大切なことは、そのプロダクトを本気で愛せるかどうか

―今、デザイナーのキャリアの選択肢が多様に拡がりつつある中で、事業会社で働くことを検討している方も多くいらっしゃると思います。鈴木さんは制作会社やご自身で起業もされ、インハウスデザイナーのキャリアも経験されていますが、どんな人がインハウスで働くことに向いていると思いますか?

たとえば、グラフィックデザインだけを突き詰めるなら、制作会社の方が色々なテイストのデザインを経験しやすいと思っています。

一方、事業会社の場合はその前後の領域と言いますか、グラフィックデザインの前段階のUIデザインや「そもそもどんなものを作ろうか?」という企画の段階から入れるのが魅力だと思います。

デザインした後も、効果があったかどうかを計測して改善するような領域も含めて、新しく学べることが多いなと思いました。

鈴木さん

―ひとつの領域を突き詰めるなら制作会社だし、デザイン領域の幅を広げるならインハウスだと。

一概には言えないと思いますが、私の経験上はそうだと感じます。

鈴木さん

―ありがとうございます。最後に一つお聞きしたいのですが、インハウスで働くうえで、一番大切なことって何でしょうか?

そのプロダクトを愛せるかどうかだと思います。私自身もKARTEの目指すビジョンに共感しているからこそ、もっと良いサービスにしたい。もっと広めていきたいというモチベーションにつながっています。

鈴木さん


―なるほど。そうすると、自分が好きなものを見つけて、そこの会社にアプローチするのがいいかもしれませんね。

もしその会社には入れなかったとしても、同じようなサービスを提供している会社を探してみるとか。単純に選択肢を知るだけでも視野が広がりますし、今は昔よりもいろんなツールで会いたい人と会える環境があるので、とにかくアプローチして人と会ってみるのが一番だと思います。

あとは、なぜインハウスに入るのかという目的意識は持って動いたほうがいいと思います。いい面だけじゃなくて、人によっては悪い面もあると思うので。なんのためにキャリアを変えようとしようとしているのか?どうして事業会社に興味を持ったのか?という目的に立ち戻って考えてみると、新しい気付きを得られるかもしれません。

鈴木さん

―貴重なお話をありがとうございます!


プレイドのデザイナーブログでは、KARTEのデザインに対する取り組みや、デザイナーが学ぶためのコンテンツを発信しています。インハウスデザイナーに興味がある方は、ぜひ一度覗いてみてはいかがでしょうか。

取材/文
松山 響
撮影
上岡 伸輔
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