働き方改革という言葉も浸透してきて、副業やフリーランスの働き方に関して随分と認知度も広がってきました。ただ、まだまだ少数派の働き方であることに違いありません。
そんな中でもフリーランス、副業に挑戦してみたいという方も増えています。でもどうやって始めたらいいのか、自分にフリーランスとして請け負える仕事なんてないんじゃないかと考えている人も多いのが現状です。
現在、農業従事者として働く傍ら、フリーランスのWebエンジニアとしても活動している私の実体験をもとに、始めたきっかけや活動内容を紹介したいと思います。
きっかけは祖母の骨折
私は元々ハウスメーカーを経て、ずっと営業として働いていました。チームで動いて成績を達成する楽しさ、お客様からの信頼を得て、親しくしていただける嬉しさなど、会社員としての仕事はとても充実していました。しかし、心のどこかで「定年退職するまでずっと毎朝同じ時間に起きて、満員電車に揺られて会社に勤めるって実感がないな」と思っていました。
そんな中きっかけとなったのは、福岡に住んでいる95歳の祖母が、尻もちを着いたはずみで腰を骨折して入院したことでした。「年齢も年齢だからこれ以上一人で住まわせるわけにはいかない、腰が完治したとしてもこの先は老人ホームだろう」と、そのような話しも出てきたのです。
大好きな祖母の家、小さい頃から駆け回った山、田舎の景色がなくなってしまう。
そんな思い出の場所をなんとか残したい、その思いがフリーランスとして活動しようと考えたきっかけでした。祖母が昔やっていた花農家を、自分の手でもう一度復活させてみようと考えたのです。
思いつきでプログラミングスクールに通う
思い立ったら即行動。退職願いをすぐに出して勢いで会社を辞めてしまいました。ふとそこで思ったことは「農作物って種をまいてから売れるまで数ヶ月かかるよね?最初の1年は収入ないけどどうやって生きていこう?」ということでした。我ながら全くの無計画でした。
そこで思いついたのがプログラミング。パソコンとネット環境さえあれば福岡の田舎でも畑仕事しながら副業として稼ぎになるんじゃないか?ウェブデザインと農業を組み合わせて面白いことってできないのかな?というなんとも浅はかで計画性のないものでした。
ただ一度興味を持ってしまったら動き出せずにはいられない性分なため、すぐにパソコンを購入してプログラミングスクールへ申し込みに。会社員時代、請求書などは多少作成したことがあるものの、大学時代からパソコンなんて触ることもない生活で、アナログ人間の極みでした。
そんな人間がプログラミングなんてできるのか。プログラミングスクールは3ヶ月間の短期集中講座でしたので、一日も休まずひたすらパソコンに向かう毎日でした。スクールに通う学生のほとんどが他業種からエンジニアへの転職希望者だったので、私のようにすぐにフリーランスへという人はとても稀でした。
フリーランスを目指している人も、最初の1年は会社に勤めてキャリアを積んでからフリーランスへ転身するのが普通の流れでした。私は少しでも早くフリーランスの経験を積みたかったため、スクール卒業後は就職せずにフリーランスとしての活動を始めました。
孤独に耐え、一人で仕事する大変さを痛感
右も左もわからない中でとりあえず個人事業主として働き出したものの、どこで仕事がもらえるのかさっぱりわからない状態でした。プログラミングの案件はそうしょっちゅう依頼をいただけるものでもなく、収入が安定しません。
クラウドソーシングサービスから仕事を受注しようにも、実績が少ない駆け出しフリーランスに依頼するような甘い世界ではなかったのです。ほとんど収入のない月もありました。こうして生活が困窮していた中、ありがたかったことはプログラミングスクールで仲良くしてくれた同期や友人が仕事を与えてくれたこと。
ホームページ制作の仕事やプログラミングは関係なくてもパソコンが多少使えるならお願いということで、介護施設のチラシ、パンフレットの制作などを請け負ってフリーランス生活がスタートしました。
フリーランスとしてスタートしたものの、最初に感じたものは「孤独」でした。最初のうちは依頼いただいた仕事がどの程度の期間で終わるものなのか予測が立ちません。プログラミングでつまずいてしまった場合、周りに教えを請うような知り合いもいなかったため、一人でひたすら考え込む毎日です。
依頼主の方には納期を待っていただき、とても迷惑をかけてしまいました。中にはホームページ制作の依頼はあったものの、本当に会社にホームページが必要なのか、ホームページを作ることでどの程度売り上げアップが見込めるのかをコンサルタントにも相談したいということで、私のほうで人伝てにコンサルタントを入れて話を進めたこともありました。ただ、最終的には契約に至らずコンサルタント料ももらえず、コンサルタントへの多額の支払いだけが残るケースもありました。
当たり前の話ではありますが、会社員ならチームとして動くのに対して本当にフリーランスは一人で動くので、何から何まで全て一人で行わなければならないんだなと痛感しました。
とりあえず動けば、未来は変わる
個人的にフリーランスの活動をして一番大切だと感じたことは「人との繋がり」。現在はプログラミングに関して相談できる人と出会え、知人からの紹介で動画編集、撮影などの仕事にも携わることができています。多岐にわたって仕事を紹介してもらえるのも、自分の周りにいる友人や知人のおかげです。
その人たちに「フリーランスを始めたからなんでもいいから仕事ちょうだい!」と勇気を出して言えたことが、大きく状況を変えてくれた気がします。最初は周りが会社員ばかりなのでフリーで働いていると言い出しにくかったのですが、いざ伝えてみると様々な仕事をもらえました。
webエンジニアとしてフリーランスを始め、選り好みせずやってみることでライター、動画編集などに関わることも。おかげで会社員時代には決して経験することのできなかった幅広い仕事内容、出会いがありました。
そして今は農業見習いとして知り合いの農場に研修を受けに行きながらホームページ制作なども並行して行っています。やりたかった祖母の山へはまだ戻れていませんが、着実に夢に向かって近づいてきている気がします。
私のようになんのスキルも持っていない人でも、興味があるなら一歩を踏み出してまずは動いてみること。意外なところで自分の力を必要としてくれる人が現れるはずです。