最近ではWebサービスやWebプロダクトを提供するにあたり、UX(ユーザーエクスペリエンス)の向上や改善は当たり前のように語られています。
UXを考えるときは、ターゲットとなるユーザーを明確にし、そのユーザーをどのようにハッピーにするか?という視点がとても重要になります。
ユーザーとサービスや製品をつなげるUI(ユーザーインターフェース)を改善するのもひとつの方法です。しかし目に見えない幸福感をもたらす深みのあるUXには、単にUIの改善だけでは足りません。
そこで今回は、UXのクオリティを高めるために必要な5つの要素をくわしく解説します。
【ポイント1】コンテンツ力を高めることは、なによりも重要
アプリやWebのコンテンツがもつ魅力をコンテンツ力と呼びます。コンテンツ力は集客力と言い換えることも可能です。UXを向上させるためには、このコンテンツ力を高めることが重要なポイントになります。
ユーザーが繰り返しハッピーな体験を得られるコンテンツとは、ユーザーが求める信頼に値する情報の提供です。ユーザーが求めているのは「このサイトやアプリなら、ほしい情報を手軽に得られる」という信頼感や、「サイトやアプリを利用したら得した気分になった」というポジティブな体験です。
コンテンツを制作するときは、検索エンジンばかりを意識しがちですが、ユーザーありきの姿勢を忘れないようにしましょう。
そのためにはしっかりターゲットを形成し、ターゲットユーザーがどのような情報を求めているのか分析する必要があります。その上でターゲットユーザーにとって興味深く貴重な情報に仕立てていくことが求められます。
コンテンツを充実させるために新しい記事を定期的に投稿するほか、古い記事を修正し鮮度を保つことも大切。ターゲットユーザーが求めている情報と提供するコンテンツの精度を上げるためには、競合サイトを分析するといいでしょう。
どんなにITやデザイン技術が進歩しても、ユーザーに寄り添った上質なコンテンツを提供し続けることは、不変的なUX向上への近道です。
【ポイント2】ユニークな存在感と機能性を両立させる
個性的で魅力的なビジュアルにするために、美しい写真やおしゃれなグラフィック、動きのあるインタラクティブなデザインを取り入れることは大切なことです。
実際にパララックス・スクロールに代表される、記憶に残る体験を与えるデザイン手法を導入すると、ユーザーのページでの滞在時間を延ばせます。
しかし遊び心たっぷりのデザインにする一方で、忘れてはいけないのがアプリやサイトの機能性です。趣向を凝らしたデザインを駆使して、アプリやサイトにユニークな存在感を与えると同時に、機能性とのバランスも考える必要があります。
たとえばパララックス・スクロールは、ランディングページやシングルページのサイトでは有効ですが、すべてのコンテンツに適しているわけではありません。とくにオンラインショッピングの画面だと、動きのあるアニメーション効果を邪魔と感じるユーザーも多く存在するからです。
特に小さな画面のスマートフォンでは見栄えしないため、スマホアプリやスマホユーザーが多いWebサイトでは使用しないほうがいいでしょう。
また、自分でスクロールをコントロールしたいのに思い通りにならないと、ユーザーは混乱してサイトから遠ざかることさえあります。
クリエイターはユーザーがストレスを感じないよう、ユーザーが実際に使用するときのことをイメージしたデザインを心がけるようにしましょう。
視覚的な刺激とともに、直感的でかんたんに操作できる機能性もユーザーは求めているため、双方のバランスも考慮するのがUXのクオリティを高めるポイントです。
【ポイント3】使い勝手の良さを実現!ユーザビリティを改善
使い勝手だけを考えるのではなく、目的や状況、ユーザー特性に合わせてユーザビリティを最適化することも、UXを高めるポイントです。最適化をせずにただ「使いやすそう」に見える競合サイトのUIを真似るだけでは、ユーザーの気持ちを動かすUXの向上にはつながりません。
たとえばコンバージョンに直結するフォームのユーザビリティをみてみましょう。フォームのユーザビリティを語るとき、経験則からユーザーの面倒な手間を減らすことが大切だと考えがちです。
しかし、高額な金融商品を販売するサイトだった場合、ユーザーによっては入力項目が多く複数ページにわたるフォームのほうが最適化されたものかもしれません。高額商品をシンプルでかんたんに購入できてしまうことに、不安を覚えるユーザーも存在するからです。
このようにサイトごとのユニークな特性に配慮したユーザビリティの構築が求められます。
サイトの特性を考えなくてもユーザビリティを改善できるのが、適切なレスポンシブデザインを採用し、複数のデバイスのスクリーンに応じた快適な環境を作り出すことです。
今や基本中の基本のようですが、まだ対応できていないサイトを多く見かけます。ユーザーが好きになり、楽しく快適に利用できるサイトを目指して、まずはレスポンシブなレイアウト構築を始めることが大切。これだけでもユーザーの離脱を防ぐ手立てになります。
【ポイント4】ブランド力とUXの相乗効果で「ファン」を増やす
ブランド力を高めることも、UXを向上させる重要なポイントのひとつです。ブランド力を上げるために、ライバルとの差別化をはかる「ブランディング」に取り組んでいるクリエイターも多いことでしょう。
ブランディングでは、誰の、どのようなニーズに、どのような機能で応えるかという3つの要素を明確にし、商品コンセプトを作り出します。このブランドの原点となるコンセプトは、時代にマッチしていることが望ましいでしょう。
「誰の」という部分がターゲットユーザーになります。ターゲットユーザーを設定する代表的な方法は、ペルソナ(サービスに対する架空のユーザー像)の設定です。
この設定は、UXを考えるときの「ターゲットユーザーをどのようにハッピーにするか?」という視点に通じます。UXはユーザーの「気持ち」を大切にするので、より生身のユーザーをペルソナに設定すると良いでしょう。
ブランド力とUXは切り離せないと言っても過言ではありません。ブランド力もUXもユーザーに「好き」という感覚を生むことがゴールです。ユーザーが体験する「好き」という気持ちが、同業他社との差別化に重要な役割を果たすのです。
ブランド力との相乗効果で生み出される心地よいUX体験を通じて、「好き」という共感や愛着を抱いてくれるファン=ユーザーを増やしましょう。
【ポイント5】UX向上には品質改善に取り組む運用力は不可欠
ユーザーにとって使いやすく愛着のわくアプリやサイトに育つまで、運用を開始してから品質改善を重ねる努力がとても重要になります。
UXのクオリティを高めるうえで必須のポイントは「測る」と同時に「改善する」ことを想定して、アプリやサイトの構築段階から改善活動を計画しておくことです。
UXを考慮した設計では、UXデザインアプローチを駆使してアプリやサイトの構築段階でユーザー体験を「予測」します。しかし予測精度を改善の余地のない、完璧と言えるレベルまで高めることは非常に難しい、という点に留意しておきましょう。
そこで一歩踏み込んで、運用しながらユーザーの行動や体験を「測定」し、理解を深めることが求められます。これがアプリやサイトの運用力です。
計画を立てておけば、運用段階で導き出した改善案を速やかに何度でも試せます。そのため当初意図したUXを提供できているかどうか、といった検証作業もスムーズにおこなえるでしょう。
UXのクオリティを向上させてイメージUPをはかろう
ユーザーのニーズに応える工夫が随所にみられるサイトやアプリを利用すると、ユーザーの中にそのサイトやアプリへの信頼感や満足感が増します。そのためユーザーが何度でも楽しく快適なUXを求めて、戻ってくる確率が高まるといえるでしょう。
この「楽しい」「ハッピー」「信頼できる」といったポジティブなUXは、ブランドイメージに直結します。おのずとサイトやアプリに対する愛着や「好き」という感覚が芽生えるのがポイントです。
今回はビジネスの成功に今や不可欠とされるUXのクオリティを高めるために必要な5つのポイントを開設しました。ユーザーから好かれるサイトやアプリ作りに役立ててください。