私はデザイン会社に13年勤務し、現在はフリーランスのデザイナーとして仕事をしています。
この記事では会社員デザイナーからフリーランスになった理由や、会社勤めと何が違うのかなど、フリーランスデザイナーのメリット・デメリットをはじめ、フリーランスを続けていこうと思えたきっかけについてご紹介します。
現在フリーランスへの独立を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
フリーランスに転向したきっかけは会社勤めへの疑問
私の場合、会社勤務時代は毎日深夜まで残業や休日出勤があたりまえでした。サービス残業になることもあり、有給休暇を自由に取得することが難しい環境。社内の空気も悪く、毎日どこかで大声が飛び交うような会社で気が休まるときがありません。すぐに辞めればよかったのにと思うかもしれませんが、当時は仕事をこなすので精一杯で、何も考えられない状況でした。
転機の最も大きなきっかけは、社長の交代です。給料がそのままにもかかわらず、今までよりもさらに作業量が増えてきついと感じることが増えました。新社長の考えについていけないと感じてしまったのです。
もともと独立志向のあった私は、同じ時間を働くなら働いた分だけお金に直結するフリーランスに転向しようと決心しました。デザイナーは、最低でもパソコンが1台あれば仕事ができます。すでに自宅にネット環境やパソコン設備が完備されており、新たに購入する設備がなかったことも理由のひとつでした。その後は早かったです。1月に決心し、2月には会社を退職。晴れてフリーランスデビューを果たしました。
しかし、最初から順調とはいかず、4つの悩みと直面しました。
1. 仕事のもらい方がわからない
1つめは「仕事をどこからいただいてくるのか」です。
一般的に独立する際は、ある程度仕事先の目安があって独立するものだと思います。
しかし私の場合、勢いでフリーランスに転向したため、定期的に仕事をいただけるクライアント先がありませんでした。会社のように営業が仕事を受注してきてくれることがないため、自分で仕事を探してこなければいけません。
お世話になっていたクライアント様に連絡するのはもちろん、クラウドソーシングサービスに登録、知人・友人の紹介…と考えうる伝手をあたりましたが、最初のうちは少ししか仕事につながりませんでした。
それでも試行錯誤をかさねて少しずつ仕事が増え、現在では数社から継続的にお仕事をいただき、安定した収入を得ています。
2. 報酬の未払いトラブル
2つめは「クライアント様とのトラブル」です。
報酬の未払いトラブルに巻き込まれたこともあります。
なかには納品した直後に音信不通になる悪質な場合もあります。少額控訴などの方法もありますが、手間をかけても得られる金額が少額すぎて、せっかくの報酬を諦めてしまうこともありました。痛い目に何度か遭遇した経験から、クライアント様はできる限り調べてから依頼を受けることにしています。
そのためか、現在ではこのようなトラブルは起こらなくなりました。
3. スキル不足
3つめは、「自身のデザインの力量が不足していること」です。
会社員時代の場合、自分はクールなデザインが得意なので、かわいい系など不得意な分野は、他の人に担当してもらうことができました。
しかし、フリーランスで頼れるのは自分1人だけです。せっかく受注した仕事も、イメージが表現しきれずキャンセルになることもありました。
もちろん再委託という形で他のデザイナーにお願いする方法もありますが、費用や納期などを考慮するとあまり現実的ではありません。
そこで、このままではいけないと思い、苦手なジャンルだったデザインを毎日勉強しました。時間がかかりとても大変でしたが、今ではひととおりこなせるだけの技量には成長でき他と思います。なにより、デザインの幅が広がったことで仕事の幅も広がり、より多くのことにチャレンジする楽しさが増えました。
4. 仕事量
4つめは、「仕事の配分」です。
フリーランスには、毎月の決まった収入はなく、仕事を全くしなければ収入はゼロです。
最初のうちは依頼があれば、報酬が低い仕事や納期が短い仕事でも、何でも全て受注していました。
しかし、手当たり次第に受注していると、あっという間に仕事は回らなくなり連日徹夜作業になってしまいました。そのときは心身ともに疲れ果ててしまい、本当に大変でした。
それ以来、自分で決めた最低ラインの料金・納期を基準として、目先のことにはとらわれず仕事をしています。
また、どうしても仕事が詰まってしまったあとには、少し休息を入れるなどの工夫をします。自分のワークスタイルにあったスケジュールをこなすことで、無理することもなく、仕事も私生活も充実させることができます。
フリーランスデザイナーになってわかったメリット・デメリット
フリーランスのメリット・デメリットは以下のようなものがあると考えています。
メリット:仕事の時間以外は自由につかえる
会社勤めの場合は、AM9時始業/PM6時終業のように拘束時間が決められています。しかし、フリーランスの場合は午前中に1日の仕事を終わらせることができれば午後は自由時間に過ごせます。
極端な例ですが1日で1月分の収入が稼げれば、残りは全て休みにできます。スケジュールをうまく調整できれば、時間にもゆとりが生まれます。
会社勤めのときはストレスを貯めがちでしたが、現在はストレスも少なく健康面も良好です。
メリット:業務に関係していれば、必要経費にできる
自宅を仕事場にしていれば、一部の家賃や光熱費が経費になります。また読みたかった本やクライアント先までの交通費など、たくさんの項目が経費にできることがあります。経費に落とすことで、節税にもつながるのでお得です。
デメリット:全ての責任を自分で背負う
会社勤めの場合はミスが起こったときに会社が責任をとってくれたり、金銭的負担をしてくれたりします。しかし、フリーランスは全て自分で請け負わなければなりません。
もちろん、フリーナンスなどの補償サービスを利用することで、金銭的負担を減らせます。しかし、万一ミスをすればクライアントからの信用を失い、仕事をなくす可能性があります。仕事をなくしてしまっては、生活ができません。リスクを回避するために丁寧な作業を心がけることも、フリーランスにとって大切なことです。
デメリット:事務処理もしなければならない
デザイナーとはいえ、デザインだけしていればよいわけではありません。
帳簿、確定申告、税金の支払い、請求書の整理などデザイン以外にやるべきことが山ほどあります。慣れるまでは覚えることが多く、大変でした。
独立して1年目は右も左もわからず苦労しましたが、昨今は会計用ソフトや請求書作成サービスも充実しています。便利な仕組みを利用することにより、比較的苦労せずに事務処理を進めることが可能です。
フリーランスを続けていける理由
フリーランスを続けていける理由は、当たりまえではありますが、私に仕事を依頼してくれる方がいるからです。
はじめのころは、本当にフリーランスが続けられるだろうかと毎日考えていました。ありがたいことに会社勤め時代からのクライアント様からお仕事をいただいてはいましたが、新規のクラアント様は少なかったです。
私はデザインの能力やセンスに特別自信があったわけではなく、人並み程度だと思っています。
しかしあるとき、クライアント様から「納期も早いし、デザインもとても気にいった」とのお言葉をいただきました。その後、全てのデザイン関係の仕事を私に依頼してくださるようになりました。仕事を褒められるようになったことで、どんなに忙しくても苦に感じることがなくなりました。
また、不思議なことに、そのころから仕事の依頼が途切れず続くようになりました。月により変動しますが、フリーランスになり半年ほどで会社勤め時代の給料を上回ることができ、今では倍ほどの収入を得ることもあります。
楽しくデザインでき、依頼してくれる方がいる限り、フリーランスを続けていきたいと思います。
フリーランスという生き方
フリーランスは会社員と違い、やらなければならないことが多くあり責任も重大です。トラブルが起きた場合も、自分で対応しなければなりません。しかし、会社勤めでは得られない喜びが体験できたり人脈が得られることも。仕事を安定させることができれば、多くの時間も有意義に使うこともできます。
収入を増やすもよし、家族との時間を共有するのもいいでしょう。多くの選択肢が増えることにより、人生を楽しむことができます。
フリーランスを考えている方は、ぜひ一度チャレンジしてみてください。