クリエイターの働き方改革について

現在、私たちは変化の激しい時代の中に生きています。日本の将来は明るいものばかりではなく、「少子高齢化に伴う労働生産人口の減少」「育児や介護との両立」「共働き」「人生100年時代への備え」「終身雇用制度の崩壊」などの苦しい状況に直面しています。

厚生労働省によると、「働き方改革」はこのような課題の解決のために、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く一人一人がより良い将来の展望を持てるようにすることを目指したものだといいます。

今回はクリエイターの働き方改革に焦点を当て、これからのクリエイティブ職の働き方について考察します。


労働者として雇われる場合の働き方

労働基準法に則った働き方が求められる現代では、クリエイターには徹底した生産性・効率化が求められます。

クリエイターを労働者として雇う場合、労働基準法のもと、裁量労働制を敷く会社が多いです。裁量労働制とは、賃金を労働時間ではなく成果で評価する労働時間制度です。たとえば、ある日は3時間働き、その翌日には12時間働いた労働者がいたと仮定します。この労働者が裁量労働制の下で「みなし労働時間が8時間以下」の雇用契約を締結していれば、その労働者は両日ともに8時間働いたものとみなされるわけです。

裁量労働制には二種類あり、クリエイターに適用されるのは「専門業務型裁量労働制」です。これは業務の性質上、労働者の裁量に委ねる業種のみ取り入れることのできる制度で、クリエイターはこちらに当てはまります。

この制度の下では、会社は具体的な出退勤時間の指示はしない、みなし時間制の規定、長時間働きすぎた労働者の健康確保措置や苦情処理措置を定めなくてはなりません。裁量労働制は「評価基準を時間ではなく成果に置き、労働者の裁量によって労働時間が決まり、効率的に自由に働いてもらう」という目的がありますが、一方で問題も生じています。それは、長時間労働が蔓延しているにも関わらず、時間外手当てが支払われないことです(裁量労働制を適用した場合においても、時間外手当の支払いが発生するケースがあります。「みなし労働時間を8時間超で契約を結んでいる場合の時間外手当」「労働者が深夜勤務(夜10時~翌朝5時)をした場合」です)。

このため、労働者として裁量労働制で(「みなし労働時間を8時間以下」と定められている会社で)働くクリエイターは、とにかく効率良く働くことが大切です。

これからのクリエイターは、「いかに短時間で、求められるクオリティに達する作品を作れるか」を徹底することが求められます。

「時間」については仕事を細分化し、一人ひとりの単位時間当たりのコストパフォーマンスを案件ごとに算出、共有し、見える化します。また「クオリティ」については、案件ごとに「クライアントに求められている質」がとても重要になるため、制作に入る前にしっかり理解し共有することが大切です。「クライアントに求められている質」が基準となりますため、自分の主観だけでクオリティを判断し、作品を制作することのないようにすることが大事です。


特定の会社に属さないフリーランスの増加

クリエイターには、フリーランスという働き方の選択肢があります。フリーランスとして活躍するには、これまで以上に本人のデザインスキル、営業力、業務遂行能力、自己管理能力が必要になります。

クリエイターのフリーランスが増加している背景には、ITの発達により個人で仕事を獲得しやすくなったこと、会社に頼らず個人で稼ぐ力が求められる時代になったこと、ライフスタイルの多様化で労働時間が自由であることのメリットが高まったこと、などが挙げられます。このような中、複数の企業に所属したり、プロジェクトごとに様々な発注者から仕事を貰ったりと、個人で稼ぐクリエイターが増えています。

ここで、フリーランスのクリエイターのメリットとデメリットを紹介します。

【メリット】

・自分次第で収入アップできる

  • 働く場所、仕事内容や労働時間を自分で管理できる
  • 人間関係の悩みが減る

【デメリット】

  • 収入が不安定になる
  • 自分のスキルを高め、自分で仕事を獲得する力が求められる
  • 確定申告を自分で行う必要がある

フリーランスのクリエイターは、自分次第なのでシビアな面もありますが、やればやるだけ収入がアップする夢のある働き方でもあります。メリット、デメリットを知った上で、自分に合った働き方を選択しましょう。


専門性と領域の横断性が稼ぐ力となる

会社員にしろフリーランスにしろ、理想の働き方を実現しながら効率よく稼ぐにはどうすればよいでしょうか?

これからの時代は、「この人にしかできない」「このスキルは誰にも負けない」といったオリジナルな専門性を身に付けること、それから、専門領域を超えて様々なものを組み合わせたデザインができる能力、この二つが重要だと言われています。

日本のトップデザイナーの佐藤可士和さんは、『これからは、よりオープンマインドで領域を横断する、もしくは統合的に取り組むことが大事だと思っていて、全体を俯瞰してデザインという考え方ができないとダメだと思います。』とおっしゃっています。

出典:佐藤可士和さんに聞く 「これからのデザイナーに必要なこと」 | Webマガジン「AXIS」 | デザインのWebメディア

例えば、グラフィックデザインで勝負していた人が、「デザイン×ビジネス×社会問題」のように、複数の領域を組み合わせて考える力です。領域を超えて問題を解決し、世の中をより良くしていくのがクリエイターの仕事です。

自分のデザインスキルを、第三者から見て「唯一無二の価値の高いものにする」ために腕を磨くだけでなく、デザイン以外にも様々な領域に興味を持つことが大切です。そして、自分の得意領域を超え、他の領域と組み合わせ相乗効果で世の中の課題解決をしていく力が求められます。

働き方改革によって、クリエイターの働き方が変化したことは間違いありません。これからのクリエイターには、労働者として会社に雇われる受け身な姿勢ではなく、能動的に「自分自身」が主体となり、自分のビジョン・スキルをベースに様々な仕事を組み合わせながら自己実現を目指すことが求められます。

時代の変化を察知する意志と主体性を持ち続け、より高次元の稼げるクリエイターになっていきたいものです。

ライター
danbo
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