近年のビジネスでは利用者がサービスや製品を直感的に利用できるデザインが重視されています。このようなデザインはUXデザインと呼ばれ、企業の利益に大きな影響を及ぼすことが指摘されています。
UXデザインを考える際には、利用者(ユーザー)がサービスや製品を実際に利用する際にどのような行動をとるのかを把握しなければなりません。ユーザーの行動を把握するための分析を「シーケンス分析」と呼びます。
この記事で、はWebデザイナーがUXデザインに携わる際に重要となるシーケンス分析について詳しく解説していきます。
ビジネスにおけるUXデザインの大切さ
UXとは「ユーザーエクスペリエンス(User Experience)」の略称であり、「ユーザー体験」「ユーザー経験」などと訳されます。国際標準化機構(ISO)では「製品、システム、サービスを使用した、および/または、使用を予期したことに起因する人の知覚(認知)や反応」と定義されているものです。
UXは、製品やサービスの使用前・使用中・使用後に得られる感想や身体的な反応全てです。そして利用者のUXを重視し、整えられたシステムや形状のことを「UXデザイン」と呼びます。
優れたUXデザインを考えることは売り上げにも大きな影響を及ぼします。そのため、近年の企業戦略においてUXデザインは非常に重視されるようになりました。
製品やサービスを使った後の以下のような感想もUXです。
「また使いたい」
「気持ちよかった」
「楽しかった」
といった感想だけでなく、
「最悪だった」
「もう使いたくない」
「使いにくかった」
基本的に企業の売り上げを伸ばすためには前者のUXを利用者に体験してもらうよう工夫しなければなりません。
Webデザイナーは、企業利益に直結するような優れたUXを考える上で重要な役割を担っています。
シーケンス分析とはどのような分析方法か
シーケンス分析とは、個別の利用者や特定のグループが実際に製品やサービスを使う際に、どのような行動をとったのかを分析することを指します。ただ行動の流れを順番に追っていくのではなく、一つひとつの行動にかかった時間を考慮することも重要です。
シーケンス分析では、以下のようなものを調べます。
「この記事を読むのに15分かかった」
「サイトを開いてから購入ボタンを押すまでの時間やクリック回数」
こうしたことを分析することで、
「この利用者はパスワードを忘れて困っている」
「サイトに訪れた利用者が本当に求めているものは、メインに取り扱われているサービス
ではなくサブのサービスだ」
といったことが分かるのです。
把握できた事実はサービスや製品だけでなく、システム全体に反映可能です。
個別のユーザーの行動を細かく分析することで、ユーザーがおかれている状況に配慮したデザインに整えることができます。製品やサービスを認知されてから購入に至るまでの導線がはっきりすれば、企業はそれだけ利益を得やすくなるのです。
シーケンス分析はUXデザインを考える上で重要
利用者が直感的にサービスを使えることを重視したUXデザインを考える上で、シーケンス分析は非常に役立ちます。
UXデザインと利用者の接点のことをUI(ユーザーインターフェース User Interface)と呼びます。UIはUXデザインを実際に使う際に非常に大きな役割を担っており、UXを高めるためにはUIの質も考慮しなければなりません。
UX・UI共に利用者目線でデザインすることが大切と言えます。
シーケンス分析ではWebデザイナーがUXデザインおよびUIを考える際の材料になる情報が得られます。個別のユーザーの行動を把握することで、より洗練されたデザインを作れるためです。
WebデザイナーがUXデザインに携わる際にはシーケンス分析を導入しましょう。
シーケンス分析に便利なツール
Googleアナリティクスはサイト上でシーケンス分析を行う際に便利なツールです。
Googleアナリティクスでは、ユーザーの性別や居住地、使用言語以外にも以下のようなことが分かります。
- 1回のサイト訪問でユーザーがどのような順番にリンクをクリックしたか
- 平均滞在時間
- 1人のユーザーが何回サイトに訪問しているか
こうした情報を集めてサイトやサービスの改善に活かしていきましょう。
他にもシーケンス分析ができるソフトやサービスが存在します。「シーケンス分析 ソフト サービス」などで検索してみましょう。
実際のシーケンス分析の事例
以下では実際にシーケンス分析が役立った事例を紹介します。
株式会社エイチーム・引越し侍
株式会社エイチームが運営する引越し比較サービスである「引越し侍」はシーケンス分析を行うことで10年以上運営してきた引越し侍のサービスを改善させました。
Webサービスでシーケンス分析を行うと、サービスの質向上だけでなくマーケティングの効果も得られます。引越し侍も高い精度のABテストを行い、シーケンス分析をした結果、SEOなどマーケティングの側面でも変化が得られました。
株式会社家族葬のファミーユ
家族葬サービスを展開する株式会社家族葬のファミーユは、Webサイト経由での申し込みを増やすという目標を掲げた際にシーケンス分析を取り入れました。サイト経由での申し込みを増やすためには、サイトに訪れたユーザーの行動を分析しなければなりません。
シーケンス分析を行うことによってお客様目線でのサービスの徹底が可能になった事例です。
TBCグループ株式会社
エステティックTBC、Men’s TBCを運営するTBCグループ株式会社でもシーケンス分析は取り入れられています。数字だけでは分からなかった顧客の要望を、シーケンス分析をもとに顧客の行動分析して把握することに成功しました。これにより新規顧客獲得や継続利用の促進といった効果が得られます。
Webデザイナーにとっても重要なシーケンス分析
優れたUXデザインを考える上でシーケンス分析は非常に有効な分析方法です。Webデザイナーにもシーケンス分析を行うスキルが求められることがあります。理解を深めた上で取り組んでいきましょう。