UXデザインにおいて、カスタマージャーニーマップの作成は重要な作業の1つです。
本記事では5つのステップで構成されるワークショップの設計方法について詳しく説明します。
また、オンライン上で無料ソフトを使い簡単に実践できる、ワークショップのやり方を詳しく解説します。
カスタマージャーニーマップ設計の5ステップ
UXデザインにおいてカスタマージャーニーマップを設定する際は、下記5ステップに基づいてワークショップを実施することが有効です。
・ステップ1 顧客行動の収集
・ステップ 考えていることや感じていることの収集
・ステップ3 課題のディスカッション
・ステップ4 顧客行動と媒体の清書
・ステップ5 課題の抽出
それぞれを詳しく説明します。
◇ステップ1・ 顧客行動の収集
企業のサイト、アプリなど対象媒体を訪れるに至る経緯について、詳しく行動を収集します。つぎに詳しく分析、分類します。一見すると1つの行動のように見えるものも、何段階かのフェーズに細かく分類することができます。
◇ステップ2・考えていることや感じていることの収集
分類できたら、それぞれのフェーズごとに顧客が考えていることや、感じていることを細かく収集していきます。
◇ステップ3・課題のディスカッション
ステップ2の各フェーズで出てきた、考えていることや感じていることを1つずつ課題として捉えます。課題はどのように解消すれば解決できるかをメンバーでディスカッションします。
◇ステップ4・顧客行動と媒体の清書
ステップ3のディスカッション内容を、媒体を軸に時系列に沿って整理し清書します。
◇ステップ5・課題の抽出
ステップ4の一覧表の内容にしたがって、共通した課題を抽出して完成です。
ワークショップの実践方法
カスタマージャーニーマップ作成のための一般的なワークショップのやり方を詳しく解説します。
◇ワークショップの事前準備
リアルに実践するワークショップには事前準備が必要です。参加者の募集や会場の確保、参加者に説明する際のプロジェクターのレンタル、付箋、ペンの用意、ボードとなる大判の紙またはホワイトボードがグループ分必要です。
カスタマージャーニーマップについてあまり馴染みがない参加者の場合には、以下についてプレゼンテーションを行う必要があるため、司会進行のレジュメも用意しましょう。UXデザインのためのカスタマージャーニーマップとは何なのか、マップ作成にはどのような意義があるのか、といったことです。
社内や学内でワークショップを実践する際は、比較的参加者の確保は容易です。しかし、参加者の都合に合わせたスケジューリングの調整などが必要となります。
◇ワークショップの開催
ワークショップ当日は開始にあたって用意した資料に基づき、カスタマージャーニーマップについて説明する必要があります。プレゼンテーションが終わったら、人数によってはグループ分けや作業分担をしたり、リーダーを選定しましょう。
付箋には必ず記名して貼り付けてもらうよう促しましょう。作業が始まっても、グループ間を見回って質問に応えたり、必要に応じてネットで調べたりしながら、作業が停滞しないよう参加者をサポートします。
◇ワークショップ終了後の作業
ワークショップが終了したら、付箋を紙やホワイトボードに貼り付けたまま写真撮影か、保存して後ほどパソコンに書き起こす、リアルタイムで書き残しておく必要があります。
ワークショップ開催後に発言者の意図が見えにくい付箋が後々見つかることも多いため、保存者は発言者に連絡して確認しなければならないケースもあります。
カスタマージャーニーマップの存在意義は、サイトやアプリの改善に活かすことです。しかし、短時間で行うワークショップでは、フィードバックできるほど深掘りできないことも多いです。一度各部署へ持ち帰り、ワークショップを複数回に渡って開催しなければならないケースも多くあります。
リアルのデメリットを一気に解消!オンラインワークショップの実践事例
新型コロナウイルスの影響で、オンライン中心で仕事をするチームも増えてきています。ワークショップというとオフラインで実施されるものだと思いがちですが、実はカスタマージャーニーマップの作成は、オンラインでのワークショップがおすすめです。リアルで行うワークショップのデメリットが、オンラインでは一気に解消できるからです。
◇オンライン・ワークショップの3つのメリット
・下準備や保存作業が必要ない
・リアルで1か所に集まらなくてもよい
・リアルタイムで実施する必要がない
それぞれ詳しく解説します。
・下準備や保存作業が必要ない
オンラインワークショップでは、下準備の手間が簡略化できます。スケジューリングなどの手間はもちろん、付箋やボードの手配も必要ありません。カスタマージャーニーマップ作成に関する資料は、ワークショップ開催までに読んでおいてもらえるよう、オンライン上で共有しておけば済みます。
ワークショップ期間中も付箋は自動保存できますので、面倒な書き写し作業は必要ありません。
・リアルで一か所に集まらなくてもよい
リアルで1か所に集まる必要がないので、会場やプロジェクターの手配が必要ありません。
・リアルタイムで実施する必要がない
リアルタイムで実施する必要がないので、複数回集まる必要がありません。各作業ごとに締め切りを設けておき、主催者がオンラインで進行します。そのため、課題の抽出から解決方法まで、深掘りすることが可能となり現実的なフィードバックが実現するのです。
◇オンライン・ワークショップの実践方法
オンラインでのワークショップの実践には、ボードと付箋の役割ができるソフトを使います。付箋ソフトには様々なものがありますが、おすすめしたいのはTrelloです。
trelloはフリーメールかGoogleアカウントがあれば誰でも無料で簡単に登録できます。有料プランもありますが、一般的なワークショップに関わる作業であれば無料で完遂可能です。
trelloを用いたオンライン・ワークショップを、事例を交えながら詳しく解説します。
① ボードを作成する
アカウントを作成したら、主催者はボードを新規作成しましょう。
ボードはワークショップの紙やホワイトボードの役割です。ボード名にはカスタマージャーニーマップのタイトルを付けましょう。たとえば、「トキオ・クローズ」というミドルエイジ女性向けのアパレルサイトがあったとして、そのサイトの改善プロジェクトを手掛けるとします。
② ボードを共有する
主催者はボードをネット上の誰とでも、参加者全員と共有できます。社内で共有したい参加者のメールアドレスを「招待」に入力しましょう。
③ カスタマージャーニーマップに関するリストとカードを作成する
ボードには複数のリストを作成でき、リストにはさらにカードを作成できます。カードは付箋と同じ役割をして、カードの移動はクリック&ドラッグで簡単にできます。カードにはファイル添付も可能です。
主催者はカスタマージャーニーマップとは何かについて、リストを作成しておきましょう。カスタマージャーニーマップとは何なのか、カードにして置いておきましょう。
ほかにも、参加者はこれからどんな作業をするのかを、「カスタマージャーニーマップに参加するって、何をしたらいいの?」カードや、どんな発言をしたらいいのか、「こんなカードを待っています!カード例10選」などを置いておくことで、主催者への質問の手間を省けます。
開催期間中に質問が出てきたら、すぐにこのリストに新しくカードを貼り付けることで、公開Q&A板となり、同じ質問が繰り返されることを防ぎます。
④ 5ステップに基づいた各リストを作成
カスタマージャーニーマップのワークショップの5ステップに基づいた各リストを作成し、それぞれに期間を設定します。
アパレルサイトであるトキオ・クローズにおいて、顧客行動の収集は「トキオ・クローズをクリックするまで」となります。
顧客行動の収集事例:トキオ・クローズをクリックするまで
・Instagramでインフルエンサーが着ているモカ色のスカートのスタイリングを見たから、Googleでモカ色スカートで検索して、トキオ・クローズをクリックした
・代官山のリアル店舗で色違いを見たが、気に入った色がなく店舗では購入に至らず、Googleで「トキオ・クローズ スカート」で検索してクリックした
つぎに、行動のフェーズごとに分類してもらいます。分類はラベルで色分けしておくと便利です。
発見・Instagramでインフルエンサーが着ているモカ色のスカートのスタイリングを見た
検索・Googleで「モカ色 スカート」で検索した
選択・検索結果の中からトキオ・クローズをチョイスした
考えていることや感じていることの収集:なぜトキオ・クローズを選んだのか?
分類できたら、それぞれの3フェーズごとに顧客が考えていることや、感じていることを細かく収集していきます。
発見:Instagramでインフルエンサーが着ているモカ色のスカートのスタイリングを見た
- モカ色のスカートが可愛い
- モカ色は今年流行るらしい
- 私も欲しい、似合うかな?
- 丈がもうちょっと短い方が好み
- 2ブログだともっと好み
- このブランドだとちょっと予算オーバー
- 1万円以内であったらいいな
検索:Googleで「モカ色 スカート」で検索した
Googleで「モカ色 スカート」の検索1ページ目から、ざっと流し読みした際の、各サイトの印象についてカードを作りましょう。
- Aの某ブランドは高い
- Bはモデルが細すぎて私に似合うか分からない
- Cは平置きされた服の写真で分かりにくい
- Dの某サイトのチョイスはプチプラ過ぎて信用できない
- Eはトルソーの写真で分かりにくい
- Fはコーディネートばかりで、お腹いっぱい
課題のディスカッションから抽出まで
ステップ2で出てきた項目を課題と考え、どのように解消すれば解決できるかをディスカッションします。
- 検索1ページ目に入る
- 平置きやトルソー写真以外にモデル着用の画像を用意する
- ぽっちゃり体型のミドルエイジのモデルも起用してLサイズを着てもらう
- 価格帯を明確にする
⑤ 課題のフィードバックがしやすい
オンラインでのワークショップのさらなるメリットは、このように課題のディスカッションや清書、抽出がオンライン上でできてしまうことです。
今回のワークショップの結果では、つぎのようなフィードバックが得られました。
企画販売部へのフィードバック
- 平置きやトルソー写真以外にモデル着用の画像を用意する
- ぽっちゃり体型のミドルエイジのモデルも起用してLサイズを着てもらう
サイト作成担当へのフィードバック
- 検索1ページ目に入るよう、色や流行などの特集ページを組む
- トップページにコンセプトを表示、価格帯を明確にする
フィードバックの実施期限を決めることで、社外委託する選択肢も出てくるでしょう。担当者では期限内での実践が難しい場合、上層部は担当者の増員や、状況によってはモデル撮影や特集ページ制作などを外部へ委託するといったことです。
これらの過程も結果も、すべての社内参加者で共有が可能です。オンラインであれば、現場に即したカスタマージャーニーマップを作成できます。
UXデザインのカスタマージャーニーマップをオンライン・ワークショップで設計しよう
オンライン・ワークショップなら、社内、学内を問わず世界中の人々とカスタマージャーニーマップを簡単に作成することが可能です。参加者間のスケジューリングの手間もいりません。
trelloのような無料ツールを使えば、費用も不要です。優れたUXデザインのために、カスタマージャーニーマップをオンラインで作成しましょう。