UXデザインのユーザーテストとは?実践方法と事例を紹介

昨今、UXデザインの有用性がにわかに浸透しつつあります。しかし、本来もっとも重要視されるべきユーザーテストが、時には本当にただのプロトタイプの試作のみに留まってしまうケースもあるようです。ユーザーテスト事例を通じて実践方法を解説しながら、ユーザーテストの重要性とは何なのか、詳しく解説していきます。


UXデザインでのユーザーテストとは?

UXデザイン(ユーザーエクスペリエンスデザイン)とは、簡単に言うとサービスやウェブサイトなどを顧客満足の高い状態で作成することです。では、UXデザインにおけるユーザーテストとは具体的にどのようなものなのでしょうか?

ユーザーテストはUXデザインのための最終ステップ

UXデザインの6つの工程は以下の通りです。

UXデザインのための6ステップ

  1. 目的の設定
  2. リサーチの実施
  3. ペルソナ・シナリオの設定
  4. カスタマージャーニーマップの作成
  5. プロトタイプの作成
  6. ユーザーテスト

ユーザーテストとは?

ユーザーテストとは、UXデザインによって出来上がったサービスやウェブサイトのプロトタイプをユーザーにテストしてもらうことです。

テストに参加するユーザーは開発には携わっていません。未知のサービスやウェブサイトにはじめて触れるのです。そこでユーザーはどの段階で、使いやすさを感じたのか、逆に使いにくさを感じたのか。どのポイントに、快く感じたのか逆に不快に感じたのか、そう感じたのはなぜなのかなどについて、ヒアリングを行います。

ユーザーテストの真の重要性とは?

ユーザーテストはUXデザインを実現するための最終段階、いわば最後のチェックの位置にあたるように見えます。しかしそうではなく、ユーザーテストの真の役割は別にあるのです。

ユーザーテストの真の役割は、ユーザーテストによって得られた数々の生のユーザーの声がフィードバックされることで改良点が浮彫りとなることです。その情報をプロトタイピングへと還元することが可能です。

ユーザーテストは、UXデザインの総仕上げではなく、さらなる改良型プロトタイプを作成するためおフィードバックであることが重要といえます。どの段階で切り上げて完成とするかの見極めはプロデューサーのバランス感覚にかかっています。


【事例】ユーザーテストの実践方法

実際のユーザーテストの流れと実践方法を、事例を交えながら紹介していきます。今回は一例としてあるアパレルブランドのネットショップのユーザーテスト例を紹介します。

ユーザーテストの準備

ユーザーテストを実施する前の準備として、以下の項目を設定しておきましょう。

・ユーザーのリクルーティング

⇒プロダクトとはまったく関わりのない人、2~5人ほどが望ましい

・ユーザーテストの目的を設定する

⇒商品を思い通りに探せ、気に入ったものを購入できるか?

・タスクの作成

⇒ユーザーに何をしてもらうのか? ブランド名を検索して商品を購入してもらうまでの一連の流れの工程の1つ1つを、細かくパイロットテストしながらタスク立てしておく。

・役割分担を決めておく

スタッフから3人を選びます。

  • インタビュアー ⇒ ユーザーに質問する人
  • レコーダー   ⇒ ユーザーの発言を記録する人
  • オブザーバー  ⇒ ユーザーの行動を記録する人

※当日は会場内に3人が入るとユーザーが緊張して普段通りの動きができない可能性があるため、インタビュアー1人がユーザーと同室に入り、録画しながらレコーダーとオフザーバーやそのほかのスタッフはリモート状態で別室で見守るのが望ましい。

ユーザーテストの実践

ユーザーテストの開始にあたっては、つぎのことをユーザーにお願いします。

  • 録画することの同意
  • できるだけ普段通りにタスクを実行すること
  • タスクを実行する際、思ったことを何でもいいので声に出して言ってもらうこと

声に出すのは思考発話法と呼ばれる手法で、スタッフへのフィードバックに役立ちます。

①ユーザーに来てもらい、実際にサイトを検索するところからスタート

⇒ブランド名を検索して1番最初に来るか?

②ユーザーによるタスクの実行

インタビュアーはユーザーの操作に対し批判的にならないよう、誘導してしまわないよう注意しながら質問していきます。質問の際、なるべく柔らかい口調で、操作の邪魔にならないよう気を付けましょう。

・トップページの見やすさはどうです?

  ⇒いいですね、かなりおしゃれな印象です。でもちょっとごちゃごちゃしてる感じかな。

・ひと目でこのアパレルブランドのサイトだと分かりますか?

  ⇒分かります、はじめて着たんですけど。でもTシャツショップだとはあまり感じないですね。

・商品の大きさはどうですか?見やすいですか?

  ⇒はい、ちょうどいい感じですね、どんな絵柄かすぐ分かりますし。あ、これ可愛い。

・可愛いのありました? 

  ⇒これ、好きな感じです。

・もっと見たいですか?

  ⇒そうですね、でも男性用とかキッズ用のは表示させなくてもいいかな。

※絞り込みの必要性を感じているようですが、ここは誘導しないために質問を控え、ユーザーの言葉を繰り返すのみにします。

・なるほど、男性用や子ども用のTシャツ画像は必要ないですか?

  ⇒そうですね、レディースだけ見たいかな。

※この時、下の方へスクロールしてしまったため、上方やサイドバーにある「レディース」のメニューバーが見えない状態でした。ユーザーは上方へ戻りメニューを探します。

  ⇒あ、あった。うーん…。

・どうしました?何か不便でも?

  ⇒不便、というほどのことでもないんですけど、グレーなので分かりづらいなって。

※メニューバーは背景がグレーで、ブラックのフォントも小さいものでした。

ユーザーテスト後のドキュメンテーション

ユーザーテスト後は、テストを実行したスタッフで集まってユーザーがテスト中に行動したことや発した言葉の記録や録画を見ながら、1点1点洗い出しその様子も録画するドキュメンテーションを行います。

ドキュメンテーションのフィードバック

ドキュメンテーションはユーザーテストを実行したスタッフだけでなく、プロダクトに関わるスタッフ全員に共有し、フィードバックを行います。

1点1点について改善すべきなのか、そのままでOKなのかを洗い出すのです。たとえば今回のブランドのトップページは、見ただけでも次のような意見がありました。

【フィードバック内容】

〇 現状を維持

・トップページはごちゃつき感がある⇒ファミリー向けアパレルブランドなのでよしとする

・Tシャツショップだとは分かりにくい⇒Tシャツがたしかにメインだが、Tシャツだけではなく、ファミリー向けアパレルブランドなのでよしとする

〇 改善を検討

・下方スクロールしてしまうと、メニューバーがなくなる⇒固定メニューやホバーメニューを導入するか、サイトデザインを要検討

・メニューバーの背景がグレーでフォントも小さく見づらい⇒メニューバーはサイトデザインと関わってくるため、カラーコーディネイトも含めて要検討

このように、4項目中2項目が改善点としてあがったのです。

なお、フィードバックの内容はリアルで集まってミーティングしてもいいですが、チャットやアプリを使ってオンラインで実施することで記録化でき、業務の合間のすき間時間を使えるため、効率よく進みます。


ユーザーテストをプロトタイピングにフィードバックしよう

ユーザーテストをもとにさらにプロトタイピングしていくことが、ユーザーテスト後の作業として求められます。ユーザーテストを総仕上げと捉えずプロトタイプ制作途中と捉えることで、さらにUXデザインへと近づくことができるでしょう。

ライター
ひいづる堂
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