テクニカルディレクターの仕事は、クライアントが実現したいと思っている成果物に対し、適正で的確な技術や機能を提案し、その方向性を正す役割を担うことです。
各ディレクターと連携しながら案件を進めていくことになりますので、コミュニケーションスキルやマネジメントスキルをも必要とします。
今回はテクニカルディレクターへのキャリアパスを目指しているWebエンジニアやWebディレクターの方々へ、どうすればテクニカルディレクターになれるのか、テクニカルディレクターになるにはどういった知識や経験が必要なのかを紹介していきます。
今後、自分のキャリアの方向性を見出し、描いていきたいとお考えの方はぜひ参考にしてみてください。
テクニカルディレクターになるには?
最初からテクニカルディレクターを目指すという方もいるかもしれませんが、多くはWebディレクターやWebエンジニアなどからキャリアパスする方が多いです。
ディレクターという役職柄、誰かの上に立つことになりますのでマネジメント力やサポート力も必要なスキルとなってきます。そのため、テクニカルディレクターは、Webに関する知識や経験だけではやっていけません。
ディレクターは、その名の通り案件の方向性を指示・管理する役割を担います。そのため、専門知識だけを知り、数をこなせばいいというものでもありません。まずは、WebエンジニアやWebディレクターとなり経験を積んで、その上のテクニカルディレクターへとキャリアパスするという道が現実的ではないでしょうか。
テクニカルディレクターを目指したいという方に向けて、必要な知識と経験を紹介します。
テクニカルディレクターに必要な知識と経験
テクニカルディレクターの仕事柄、システム関係の案件を扱うのでWeb業界の基礎知識や実務経験は必須です。
基本的に必要な知識と経験は以下が挙げられます。
- 制作知識
- リサーチ力、情報収集力
- 経営学の知識
- 解析スキル
- 統計力
- 企画、設計、発案スキル
- プレゼンテーション力
- 法律の知識
- 語学
- チームワーク、コミュニケーション力
「語学」に関しては、必須スキルという訳ではありません。所属している企業が外資系だったり、海外の支社を幾つか所有していたりする場合は語学が必要となる可能性もあります。本社機能が日本だからといって、海外へ出向しないとは言い切れません。最低限の語学スキルがあると尚良いということです。
「法律の知識」に関しても必須ではありませんが、案件が似たり寄ったりする場合もあるでしょう。その際に、著作権・肖像権・知的財産権・商標権など世に送り出すのに問題がないかどうかを知っておくという面では必要な知識となります。
もう一つの着眼点として「経営学の知識」に触れますが、なぜ経営学の知識が必要なのでしょうか。その理由は、クライアント目線に立って話ができる強みがあるからです。案件の中には、Webサイトの構築・作成・分析などを依頼されることもあります。実際に作るだけではなく、クライアント目線に立ち運営側から見てディレクションを行うために経営学を学んでおくのもいいでしょう。
ここからはもっと詳しく紐解くために、テクニカルな部分とパーソナルな部分に分けてご紹介していきます。
テクニカルな知識と経験
- HTML5、CSS、JavaScript、CM などのフロントエンド言語知識
- PHP、Perl、Ruby、Java、MySQL などのバックエンド言語知識
- ユーザーインターフェースとユーザーエクスペリエンスの知識
テクニカルな部分では、既にWebエンジニアやWebディレクターを経験していれば当たり前にわかる知識も多いと思います。基本的にはWeb知識と呼ばれる言語やUI/UXといった領域が必要な知識です。
プログラマーがプログラミングしたシステムが正しく作動するかどうかや、エラーを起こしたときに何が原因でエラーが怒っているのかを正しく理解し、フィードバックをすることもテクニカルディレクターの役目です。正しい理解と適切なフィードバックをするためには、システムに組み込まれているテクニカルな知識と経験がなければできません。
パーソナルな知識と経験
- ヒアリング
- コミュニケーション
- マネジメント
- リーダーシップ
パーソナルな部分では、やはりポイントとなるのが「コミュニケーション力」です。テクニカルディレクターは、人の上に立つ仕事です。プロジェクトを組めば各専門のディレクターと連携し、実務として動いてくれる担当者がいます。さらにはクライアントもいます。1人で仕事をするわけではありません。コミュニケーション力以外のパーソナルな部分は、これらの基本となるコミュニケーション力が備わっていれば、おのずとクリアできる部分ではないでしょうか。
マネジメントやリーダーシップに関して言えば、人を引っ張るという少し特殊な能力を必要とするのではと思う方もいるかもしれません。しかし、相手とのコミュニケーションを通して自分の考えや意見をシェアすることで、それに賛同した人たちはおのずと付いてきてくれます。自分への相手からの信頼度と親密度があれば、自然とそのプロジェクトやチームは円滑に回ることでしょう。
テクニカルディレクターへのキャリアパス方法とは?
すでにWeb業界で働いている方で、テクニカルディレクターへのキャリアパスを考えている方もいるかもしれません。
今回は、Web業界でよくテクニカルディレクターへのキャリアパスをされているWebエンジニアとWebディレクターの2つの目線からキャリアパスを考えてみます。該当される方は参考にしてみてください。
Webエンジニアからテクニカルディレクターへのキャリアパス
Webエンジニアは、プログラミングを主に担う仕事です。Webページには、たくさんのプログラムが組み込まれており、「ある画像をクリックすると指定のページに飛ぶ」という当たり前の動作も、Webエンジニアがしっかりとプログラミングしているから成り立つのです。
Webエンジニアは、プログラミングというテクニカルな部分の知識と経験がすでにありますので、パーソナルな部分を補う必要があります。
補うべきパーソナルな部分は、前項で挙げている次の4点です。
- ヒアリング
- コミュニケーション
- マネジメント
- リーダーシップ
Webエンジニアで活躍されていた方の中には、実務担当者だったという方が多いかもしれません。テクニカルディレクターの場合は、言われた仕事をこなすだけではなく、積極的に意見を出して前に出ていくなど動いていく必要があります。
Webエンジニアの方は、まずはWebディレクターを目指すのも1つの手段です。ディレクターというポジションである以上、パーソナルな部分は必須スキルとなります。そこで経験を積み、最終的なキャリアパスとしてテクニカルディレクターを目指してみるのもおすすめです。
Webディレクターからテクニカルディレクターへのキャリアパス
Webディレクターという仕事は、テクニカルディレクターととても近い役割を担っていますので、テクニカルディレクターへのキャリアパスは近道だと言えそうです。
Webディレクターからテクニカルディレクターへキャリアパスするには、前項で挙げている3つのテクニカルな知識と経験をさらにブラッシュアップする必要があります。なぜなら、テクニカルディレクターとして担当者に対し指示を行い完成したシステムを確認・指摘する必要があるからです。
テクニカルな面の全体を進行管理することになるため、ある特定の技術だけを深く知っているだけでは、指示や指摘を正しく行うことはできません。
パーソナルな部分として必要な部分は、ディレクターとして働いている以上全て持ち合わせているはずなので割愛しますが、特に重要なのはコミュニケーションスキルです。コミュニケーションスキルが高ければ高いほど、どの職種でも大いに活かせるでしょう。
テクニカルディレクターへのジョブチェンジのメリットとは?
WebエンジニアやWebディレクターから、テクニカルディレクターへのキャリアパスをすると今までと何が違い、どんなメリットがあるのでしょうか。
テクニカルディレクターへのキャリアパスをした場合のメリットには、次の4点が挙げられます。
- 達成感とやりがい
- 評価の可視化
- 給料アップ
- 関連業種や他業種の人との出会いと連携
責任が大きくなれば背負うものも大きいですが、達成感ややりがいを感じることでモチベーション維持とアップにつながるので、円滑に物事が進みやすいです。
評価の可視化は、Web業界なので納品してWeb上にアップされれば結果はすぐ出ます。その結果は、閲覧数・クリック数・購入数・売上と様々ですが、良くも悪くも結果がすぐに可視化されるので評価も目に見えて分かりやすくなります。
責任が大きくなるということは、給料もその分アップします。年収が増えますし、日々に余裕が持てる生活が期待できるかもしれません。
さらに、関連業種だけではなく他業種の人たちとの出会いと連携が取れることもメリットです。人脈を増やすことは、この先の仕事へと繋がる可能性が大きいのでメリットとして挙げられるでしょう。
今度はWebエンジニアからテクニカルディレクターへ、Webディレクターからテクニカルディレクターへ、それぞれの目線からメリットを紹介していきます。
Webエンジニアからテクニカルディレクター
Webエンジニアは、主にプログラミングを行っていたテクニカルな部分に強い職種です。テクニカルディレクターにキャリアパスをした場合には、補う必要のあるスキルも多いですが格段とやれることが増えます。
プロジェクトやチームの中心となり企画発案したり会議での決定権を持つことになったりと管理職に近い働きへとステップアップが可能です。Webエンジニアからキャリアパスをした場合には、テクニカルな部分に強いテクニカルディレクターになれるので、その強みを仕事に活かせます。
Webエンジニアからテクニカルディレクターへキャリアパスをすることで、テクニカル面の知識を必要とし、最大限に活かせる大手Web制作会社やアプリ制作会社などの企業に活躍の場を拡げられるでしょう。
Webディレクターからテクニカルディレクター
Webディレクターは、既にプロジェクトやチームの中心となり仕事をしてきたので大きなメリットはないかもしれません。しかし、Webエンジニアと違うのはパーソナルな部分がとても強いということ。
ディレクターという立場である以上、マネジメントを数多くこなしてきているはずです。技術や専門知識はしっかりと勉強すれば補える部分が大きいですが、パーソナルな部分は経験によって積み重ねられるものであり、知識を蓄えるだけで身につけられるものではありません。
コミュニケーションスキルが高く、リーダーシップを取れてさらにはマネジメントをもこなすというディレクター職は難しいものです。それを経験してきているWebディレクターがテクニカルディレクターにキャリパスすることで得られるメリットは、人脈が増えることと、会社の中心となりWeb業界の企業以外でも活躍できる場が増えるというところです。
Web業界や広告業界以外の商社や製造業といった企業での活躍の場が増えるといったアドバンテージがあります。Web業界や広告業界以外の企業では、テクニカルな技術をもった担当者がいなかったり、外部企業に委託していたりと専門知識をもつ人材が少ない企業も多いです。
テクニカルな知識と経験を持ち、マネジメントとディレクションができるテクニカルディレクターは業種を選ばず、さまざまな企業が必要としていますので活躍の場が広っています。
テクニカルディレクターへのキャリアパスを目指す
テクニカルディレクターとは、管理職に近い役割を担うため求められる知識や経験は多く、責任も大きくなります。しかし、テクニカルディレクターというキャリアパスがあることで将来自分がどうありたいかを考えるきっかけになるのではないでしょうか。
独立したり、転職を考えたりとWeb業界でもさまざまな動きが出てきています。自分の将来の選択肢を増やすという点でも、キャリアパスを検討してみるのもいいかもしれません。ぜひ参考にしてみてください。