クリエイターこそ知っておきたい法律早わかり

無償での著作権譲渡や権利の制限といったトラブルに合わないために、クリエイター が知っておきたい法律の基礎知識をわかりやすく紹介します。

著作権とは何なのか、著作権に絡んでどういった契約があるのか、また契約についての基礎知識、カメラマン特有の契約にまつわる注意点を解説します。法務になかなかお金をかけられないなか、自分の表現活動を守っていくために役立つ情報をそろえました。

クリエイターが知っておきたい著作権とは

ここでは、著作権の基礎知識を解説します。著作物をつくった著作者は、著作物を無断で利用されない権利を持っているので、クリエイターにとってはぜひ理解しておきたい権利です。

著作権とは

著作権法とは、「文化の発展」を目的としているため、著作物の「創作された時点」から創作する著作者に権利が生まれることがポイントです。そのため著作権の登録や申請といった手続きは必要ありません。著作権は著作者が亡くなったあと、70年間存続します。

では著作物とは何でしょうか? 著作権法では、「思想」、「感情」を「創作的」に表現したものとされています。またその表現は、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものでなければなりません。

原稿、写真、イラストやデザインだけでなく、パネルディスカッション・講演・座談会や即興演奏された音楽も著作物です。録音や記譜されていない場合でも、形になって表現されていれば著作物とされます。

単にアイデアや頭のなかで考えている段階では著作物とはいえず、作品のタイトルは、それだけでは著作物にならないと考えたほうがよいでしょう。

著作物を自由に使えるケース

著作権制度では、文化の発展を目的としているために、著作物を自由に使える場合があります。例えば、家庭内でプライベートに楽しむ私的複製の範囲内であれば,著作権を侵害せずに著作物を複製できます。

そのほかにも「著作物が自由に使える場合」が著作権法に定められているので、文化庁のサイトを確認するとよいでしょう。

著作権は2種類の契約に大別できる

著作物を利用するための契約は、2種類に分けられます。著作物を利用する権利についての「利用許諾契約」と、著作権の譲渡を受ける「著作権譲渡契約」です。独占的に利用したい場合には、「利用許諾契約」に規定しなければなりません。独占的な利用を規定しないと、非独占的利用許諾契約になってしまいます。また著作権が譲渡されると、譲り渡した人はたとえ著作者であっても、譲り受けた人の了解なしには著作物を利用できなくなることを知っておきましょう。

クリエイターが知っておきたい契約とは

インターネットやデジタル技術が発達したことで、クリエイターやアーティストだけでなく一般の人も作品を広く公開するようになっています。「表現」を通じてビジネス行為をする場合に、避けては通れないのが「契約」です。ここでは、契約の基礎知識について紹介します。

契約は口頭でも成立する

契約は法的な拘束力を持った、当事者の合意です。原則として当事者の合意のみで成立するのがポイントです。つまり契約書がなくても、合意さえあれば契約は成立します。口頭でも契約は有効だということを知っておきましょう。ただし口頭の場合には、契約の内容があとで不明確になる場合があるので、重要な契約の場合には契約書を作るほうが望ましいのです。また当事者が未成年の場合には、親権者の同意が必要となるので注意が必要です。

相手の同意や了解を確認し、記録しよう

口頭での約束も法的には契約として認められますが、トラブルが起きたときに立証できないという点で心許ないのも事実です。トラブルを避けるためにも覚書を作成し、盛りこみたい希望事項があればEメールなどで相手方に伝えましょう。相手の意思を常に確認するステップを踏むように心がける必要があります。相手の「同意」「了解」といった意思表示は、面倒がらずに記録することが大切です。同じように「変更」が生じた場合も、「変更」に対する「同意」を確認して記録しましょう。

機密保持契約(NDA)

機密保持契約(NDA)とは、仕事を遂行するうえで知りえた情報を外部に漏らさないよう交わす契約のことで、契約に違反した場合の損賠賠償について明記されていることもあります。新規のプロジェクトに参加する場合や、クラウドソーシングの利用規約にも定められているのですでに交わした経験のある人も多いことでしょう。機密保持契約(NDA)では、漏洩してはいけない機密は何なのか、できるだけ明確にすることも大切です。

カメラマンが知っておきたい法律とは

ここではカメラマンがかかわることの多い、権利関係について解説します。カメラマンとして常にかかわる権利関係ばかりですので、再確認してみてください。

モデルリリースとプロパティリリース

カメラマンの方のなかにはストック素材へ画像を提供している人も多いことでしょう。

誰だかはっきり特定できるモデルが作品中に含まれる場合には肖像権が発生するため、「肖像権使用許諾書=モデルリリース」をモデルと交わさなくてはなりません。被写体となるモデルの許可なしに勝手に画像を使用することはできないのです。

また商標や意匠登録された企業のロゴ・製品、ペット、建物・敷地、アート作品などを撮影し、ストック素材として販売する場合にも権利関係に注意しましょう。被写体の所有者に、ストック素材としての販売に同意してもらうためプロパティリリースを交わす必要があります。

「写り込み」の規定 付随対象著作物の利用

2012年の著作権法改正によって、30条の2が新設されました。この改正で写り込み、つまり付随対象著作物の著作権者の承諾が不要となったのです。この改正後、背景に小さく写り込んだポスターや絵画の写真をSNSで公開する場合、ポスターや絵画の著作権者に利用の了解をとる必要はなくなりました。

依頼撮影の契約とは

依頼撮影に関する契約は、法律的に解釈すると「準委任契約」といえます。「業務委託契約」「委託契約」と表現することも可能です。請負人が仕事を完成させることを約束し、発注者がこれに対して報酬を支払う「請負契約」との大きな違いは、あらかじめ仕事の最終形について決まっていない点です。「準委任契約」では一定の事務処理行為をすることを約束するもので、カメラマンはこの原則に従って、現場で最善の作品を生み出すよう努力します。

クリエイターに特化した法律相談やセミナーで知識を増やそう

本記事では、クリエイターが自分の表現活動を守っていくために役立つ情報として著作権や契約、権利関係などについて解説しました。クリエイターが自分ひとりで法務の知識を身につけるのは、大変な労力を伴うことでしょう。

最近ではクリエイターむけに法律の無料相談をおこなったり、法務の知識を深めるセミナーを提供するサイトもあります。ひとりで抱え込まず、そういったサービスを利用しながら法律の知識を増やすのも、ひとつの方法です。

ライター
Mistyrose
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