デザイン思考とは何か?
課題解決へと導く4つのプロセスを解説!

デザイン思考(デザインシンキング)とは、デザイナーだけが用いる思考法ではなく、課題解決が求められる幅広い場面で応用できる思考法のひとつです。ただ考えるだけではなく仮説やテストを実行するため、より良い結果を招くための具体的なプロセスを持ちます。

「何かアイデアを出さないといけない」とぼんやり考えても良いアイデアは生まれにくいですよね。課題解決、アイデアの創出に悩んだときには、思考法を学ぶことで思考の解像度を高めて実行しやすくなります。

本記事では課題解決に悩む全てのビジネスパーソンに向けて、デザイン思考の概要とプロセスをご紹介します。デザイン思考を取り入れて、新たな可能性を発見していきましょう。


デザイン思考とは「課題解決の思考法」

デザイン思考とはデザインに必要な思考や視点を通して顧客を観察し、ニーズを理解して新たな価値を生み出す思考法です。形のある物や機能だけではなく、顧客の体験をデザインするなど、幅広く課題解決の手段として用いられます。

つまりデザイナーが日頃用いている思考プロセスを言語化して、顧客ニーズの理解とアイデア創出を進める目的を持つ思考法です。非デザイナーであっても、デザイン思考は実践できます。


デザイン本来の意味は「 設計を伴うプロセス」

デザインと聞くと「見た目を美しくする」ような意味に思えてしまいますよね。ところが本来デザインは「設計」の意味も含んでいます。

グッドデザイン賞を運営する日本デザイン振興会は、デザインを「常にヒトを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を行い実現化する。」と定義しています。

つまりは表面的な装飾以外にも、制作を行うプロセス自体や新しい価値を生み出すことこそがデザインの本質なのです。デザイン思考およびデザインは、デザイナーやクリエイターにとって馴染みがある方法です。しかしクリエイティブな行為の他にも問題解決そのものでもあります。

デザイン思考によってターゲットとなる顧客を観察して、障害となる問題を取り除くデザインをすれば、モノやサービスのプロダクトを拡大できます。ターゲット顧客のコアな悩みを解決して選んでもらいやすくするのです。


顧客を観察しなければ選ばれることは難しい時代

非デザイナーの方からすると「なぜデザイン思考が必要なのか。」「顧客に選んでもらわなければならないのか。」と思うことがあるかもしれません。良いモノやサービスを作れば自然と顧客は選んでくれると思われます。

現代には多様な変化とモノが溢れています。私たちのニーズや求める嗜好はスマートフォンや多少のお金があれば、容易に満たせるようになりました。新しいモノやサービスが次々と生まれるなかで、私たちは欲しいモノを好きなだけ選べます。

例えば無料の地図アプリ。混雑状況を予測しながら目的地までナビゲートしてくれるだけではなく、目的のカフェの内装やコーヒー一杯の値段まで調べられます。

安価でハイクオリティ、ときには無料。そのようなモノやサービスが溢れる現代では、能動的に各種サービスを横断する顧客を観察して、コアな課題や悩みを解消するデザインをしなければ、顧客に選んでもらえることは難しいでしょう。新しい技術だからといっても、顧客自身の悩み解消や希望に叶わなければ、見向きもされなくなります。

したがってデザイン思考はモノやサービスが溢れて飽和している現代では、特に有効的な思考法です。

デザイナーやクリエイターは今一度デザインのプロセスを理解するために、非デザイナーの方はご自身のビジネスシーンでどのように活用できるのか考えていきましょう。


デザイン思考を構成する4つのプロセス

デザイン思考は実践的な思考法です。仮説やテスト段階を用いてターゲット顧客の反応を見るため、実験的思考法とも呼ばれます。

まずはデザイン思考における、根本的な4つのプロセスを見ていきましょう。

1.顧客を観察して共感

デザイン思考は顧客目線の思考法です。まずは顧客の体験や行動をよく観察して、表面上だけではなく背景にある感情にも共感できるほど深く理解をします。例えば実際に自身で顧客と同じ体験をしてみる、インタビューをして言葉を引き出すなど、潜在的に抱えている課題やニーズをくみとります。

新規事業の立ち上げや新しく何かを始める場合には、お金のメリットを優先してしまいがちです。しかしデザイン思考では顧客目線を追求しながら、ビジネス観点の要素も揃えるように立ち回ります。

2.課題を設定

次に整理を行うプロセスです。顧客の観察によって得た共感を整理して、どのような課題があるのかを設定します。

顧客を観察し続けても、実際のところ正解は誰にもわかりませんよね。つまりは観察によって集めた情報のどこを使うか、ひとまず決定するプロセスなのです。

課題の解決によって「顧客は喜んでくれるのか」に焦点を定めて、課題を設定していきます。

3.仮説のアイデアを創出

設定した課題を解決するためのアイデア出しを行います。発想のためには100点満点の完璧な答えを考えるのではなく、まずは量でアイデアを出していきましょう。

仮説で良いのです。アイデアが「実現可能か」は一旦忘れることをおすすめします。顧客のニーズは激しく変化する時代であるため、これまでの常識や多数派の考えに囚われずに多様性のあるアイデアを出した方が、仮説の段階に進むスピードが上がるためです。可能性を最大化させることを優先します。

4.プロトタイプを設計してテスト

デザイン思考の最も重要なプロセスは、まずは検証してみることです。アイデアは最初から完璧ではありません。プロトタイプ(試作品)を作成して、テストをしてみます。

顧客の生活でどのようにプロトタイプが機能するのか観察して、フィードバックを元にアイデアをブラッシュアップ。小さく素早くテストまで進むことで課題解決を行います。

デザイン思考は4つのプロセスを一巡して終わりではありません。同時に平行したり、お互いに作用したり、順番がなくなる場合もあります。

プロトタイプをテストした後、新たな課題が生まれてさらに一巡することも。課題解決のための手段ですから、包括的に考えを深めることが重要です。


デザイン思考と論理的思考は多様性と再現性の違い

変化の激しい現代ではここまで紹介したデザイン思考が万能に思えますが、ビジネスの世界で長らく良しとされてきた論理的思考の上位互換、というわけではありません。

論理的思考(ロジカル・シンキング)は結論と根拠のつながりを明確にして、合理的に判断していく思考法です。AだからBといったように、思考の筋道を立てていきます。顧客のニーズが明確である場合には、論理的思考によるアプローチは強力な有効打になります。

再現性が高く、誰が辿っても同じ結論になることが予想される場合には、顧客のニーズを観察するよりも論理的思考をベースにすると良い結果を招きます。

しかし、多様性に富んだ新しい発想やニーズを発見するためには、少々力不足です。変化の激しい現代では、必ずしもAだからBと決めつけられる出来事は少なく、特に新しいモノやサービスを生み出すためには、デザイン思考の方がアイデアが創出できます。

デザイン思考は多様性、論理的思考は再現性、お互いに使いやすい場面と使いにくい場面があるのです。


デザイン思考は「小さく素早く」がカギとなる

デザイン思考はターゲット顧客のニーズを徹底的に考え抜いて、小さく素早く課題解決にアプローチしていく思考法です。

ビジネス目線で考えると、お金や持続性は考慮しなくてはなりませんよね。難しいことですが、顧客のニーズやアイデア、ビジネスの3つの視点のバランスを保ちながら、いかに実現していくかがデザイン思考の真髄です。

思考法は考えるための強力な指針です。非デザイナーであっても、クリエイティブ系のビジネスや活動をしていなくても、4つのプロセスに当てはめて思考してみると、思考の解像度は上げられます。あなたの抱えている課題を明確にして、解決する可能性があるのです。

デザイン思考によって、あなたがデザインしたモノやサービス、課題がより良い形になることを願っています。

ライター
蓮池ヒロ
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