クリエイターが裁量労働制を有効活用するために必要なこと

働き方改革関連法案が施行されて、早くも半年が経ちました。

クリエイティブ業界でも「働き方」に関する議論や取り組みは活発に行われています。ARCHETYPも、より良い働き方を模索して様々な取り組みにチャレンジしてきました。

そこで、今回は働き方改革に大いに関係する「働き方の種類」、その中でも「裁量労働制」について、企業側・クリエイター側それぞれのメリット・デメリットを整理し、クリエイターが裁量労働制を有効活用するためのポイントを紹介します。

裁量労働制の問題点

クリエイターのような専門職は、裁量労働制が適応される職種になります。しかし、必ずしもその制度が全部うまくいっているとは思いません。

なぜならば、働き方の種類が急激に多種多様になってきているため、その多様な変化に制度が追いつかず、様々なギャップや矛盾が生じているのです。

ARCHETYPも2007年の設立当時から裁量労働制を採用しており、特に課題も問題もなくこの制度のもとに会社を運営していました。

「やることやっていれば帰ってもいい」

そんな気持ちで仕事をしていたのを思い出します。


ただし裁量労働の解釈が企業と個人で違ってくることは多いにありえます。なぜかというと、お互いが都合の良いように制度を解釈するからです。

また、裁量労働の場合は評価も管理労働のように時間という絶対的なものではなく、アウトプットでの判断になってくるので、時として曖昧になりやすいのではないかと思います。

このように、様々な問題点も抱えている裁量労働制。まずは、企業側、クリエイター側からの視点ででメリットとデメリットを整理してみましょう。

企業側/クリエイター側から見る裁量労働制のメリデメ

企業側
【メリット】
・労働時間の管理をしなくていい
・残業代はなく深夜手当のみでいい
・人件費のコスト管理がしやすい
・社員の生産性が上がる

【デメリット】
・労働管理が難しい(勤怠なども基本管理しないため)遅刻の指摘などができない
・時間的制約が少ないため社内でのコミュニケーションに不具合が出やすい
(社内行事等も行いづらい)
・生産性の低い人の評価が難しい

労働者側
【メリット】
・自由度が高い
・自分のペースで仕事を進められる
・労働時間を短くすることも可能
・アウトプット評価になる

【デメリット】
・残業代が出ない
・高い自己管理能力が求められる
(それができない人は長時間労働に陥りやすい)
・チームワークをとりにくい

ハイレベルな自己管理が突破口になる

では、クリエイターが裁量労働制の中で、自身の働き方をコントロールしながらパフォーマンスを最大限に発揮するにはどうすればいいでしょうか?

まず前提として、制度というものは、権利と義務のバランスによって成り立っています。

「自由に時間配分するけれど、仕事量は管理してほしい」
「遅刻するけど残業代を出してほしい」

など、矛盾が発生してしまうと、その主張はなかなか認めてもらえないでしょう。

そして、プロフェッショナルなクリエイターとして求められる仕事の基本要素としては「品質」と「納期」です。これを守ることが大前提にあります。

その上で、裁量労働制を有効活用するためにはどんな心構えが必要でしょうか?

それはズバリ、ハイレベルな自己管理ができる人だと思います。ハイレベルな自己管理とは様々な要件をきちんと整理し実行することです。

具体的に、多角的な面から自己管理のポイントをまとめてみました。

健康管理・体調管理
日々の体調管理も含まれますが、ストレスの発散方法なども重要で、健康管理・体調管理に含まれています。自己管理ができる人にとっては、自由度の高い裁量労働制は効率的なON/OFFの切り替えを行うのに好都合な制度だと言えるでしょう。

時間の管理
自分の時間の管理ができれば、当然ながら労働時間もコントロールしやすくなります。逆に遅刻や寝坊が多かったり、納期遅れが発生したり、ダラダラと残業するのは「自己管理能力が低い」とみなされてしまいます。

生産性の管理
労働時間に制約がないからこそ、仕事を進める上でどうやったら効率化が図れるかなどの検討と実践を行うことが重要です。

感情の管理
人間には感情があるので、ときには怒ったり、気分が沈んだりするもの。しかし、その時に自分を律して冷静になることができれば、感情に振り回されることなく、普段と変わらない能力を発揮できます。

モチベーションの管理
目先の小さな目標だけではなく、それを積み重ねた先にある大きな目標を見据えることが大切です。そうすれば、目標を見失ってモチベーションが低下するということがありません。また、誰かにモチベーションをコントロールしてもらうのではなく自ら定めて実行できることもポイントになります。

チームバランスの管理
自分の作業だけでなく関わるメンバーの状態を把握できるようになると、結果的に自分の生産性を高めることができるようになります。たとえば、自分だけで生産性を上げられない場合に、メンバーをうまく動かして自分の生産性を上げることができるのです。

お金の管理
お金にルーズな人は自己管理能力が低いと考えられます。たとえば、コスト意識が低いと限られた時間の中で作業が終わらせられなかったり、自分の給料がどのようにして支払われているか、給料をもらうにはどうしたらいいかなどが考えられず、「労働時間は長いのに評価は低い」といった事態に陥りかねません。

期待値コントロール
ただ作業をするのではなく、相手が求めているものの期待値をきちんと理解し、期待値をコントロールしながらアウトプットできることも大切です。そうすれば、修正や改善の手間や、無駄な工数を省くことができ、効率的かつ品質の確かな仕事ができるようになります。

働き方の変化に対応できる、新しい制度が必要かもしれない

管理労働制は昔から行われている働き方の一つなので、ある程度、制度が確立している印象ですが、裁量労働制はまだまだ改善の余地があると思います。特に働き方の多様化がどんどん進んでいく時代に、もっと最適な制度はないのか、企業側もクリエイター側も考えていく必要があるでしょう。

たとえば、裁量労働制と管理労働制の中間の准管理労働制(仮)のような制度を作ることも一つの解かもしれません。


これからAIなどのテクノロジーによって、クリエイターの仕事内容も大きく変化していく中で、働き方の制度も変化し続けると思います。

なので、変化するたびに都度考えるというよりは、大きなフレームの中で個人が選択し柔軟に変えられるような新しいシステムを、企業とクリエイターが力を合わせて作っていけると良いのではないかと思います。

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