ひと昔前までクリエイターはいわゆる「コミュ障」でもやっていける仕事でしたが、今は高いコミュニケーション能力が求められる時代。コミュニケーションが苦手な人でもできるコミュニケーション術を、コミュ障クリエイターが陥りがちな行動とともに紹介します。
そもそも、クリエイターのコミュ障は治すべき?
コミュ障でもクリエイターはできる
まず前提として押さえておきたいのは、「コミュ障を治す必要はまったくない」ということです。ほかの多くの職業とは違い、クリエイターにとってコミュ障は素晴らしい個性のひとつです。本人が治したいと思っていない限り、治す必要はまったくありません。
資格をとる感覚でコミュニケーションスキルを学ぼう
コミュ障でもクリエイター職は十分に務まりますから、安心してください。ただ、社会人としてビジネスシーンに身を置く以上、コミュニケーションは必要です。そこで提案したいのがコミュニケーションを仕事だと割り切り、コミュニケーションをとるためのスキルを頭にいれることです。
クリエイターになるために、Flashクリエイター能力の認定資格や、CGエンジニア検定の資格を取得した経験がある人もいるのではないでしょうか。資格がなければ仕事に就けないのと同じで、コミュニケーションは社会で働くためには必要なスキルであると捉えると取り組みやすくなります。
これから提案するコミュニケーション術をインプットし、できるところからで構わないので実践していくことをおすすめします。
コミュ障クリエイターのためのコミュニケーション術
コミュニケーションをとるための準備をしよう
コミュニケーションをとるための前段階として、仕事仲間やクライアントと接触する前に準備することが2つあります。1つは「良い姿勢」です。コミュ障あるあるですが、猫背になっている方が多いです。まずはピンと背筋を伸ばして、アゴを適度にひくことからはじめましょう。
背筋を伸ばすと人と視線が合うことが多くなり、どこを見ていいのか分からなくなります。そこで話し相手と目が合うのを避けたいがために猫背になってしまう、そんな負のループを断ち切りましょう。そのためには2つめの準備、「目線」が大切です。
よく会話の際には「相手の鼻を見よう」、または「目を見よう」といいますが、鼻を見ると視線が合わず、目を見ると視線が合いすぎます。そこでおすすめなのが、相手のどちらか片方の目尻を見ることです。こうすると相手に不快な思いを抱かせず、目線が定まることであなたもリラックスして話すことができます。
心構えは相手ではなく「物事」にフォーカス
コミュニケーションをとるに当たっての心構えについてご紹介します。コミュ障の特徴として、相手の心の動きや行動の原因について考察するよりも先に、自己防衛のため自分の内面にフォーカスしてしまうことが挙げられます。そもそも他人に興味を持てない人もいます。万が一相手が危害を与えてくるのではと、相手の行動に対して恐れを抱き、防御のために心を閉ざすことはあっても、相手の思考や行動に興味を持つケースは少ない傾向にあるのです。
しかし、これは別に悪いことではありません。相手に興味を持てなくても、悩む必要はありません。自分の仕事にフォーカスできることは優れたクリエイターの素質の一つです。ただ、プロダクト全体のことをかんがえると、自身の仕事のみに興味を持つだけではうまく回らないことも多くあります。
そうした場合におすすめしたいのが、人に興味を持つのではなく、少しだけ仕事の興味の範囲を相手の仕事にまで広げるよう努めることです。相手そのものではなく、「相手の仕事」にフォーカスしましょう。
仕事の会話は最低限でOK
前準備と心構えが完了したら、いよいよコミュニケーションの実践です。仕事の話は「最低限の打ち合わせはするべき」と割り切りましょう。その際に気を付けるべきなのは、スピードです。コミュニケーションが苦手な人は、頭の中で整理しようとして静止画のように停止してしまったり、逆に早く脳内のことを吐き出してしまいたいがために、機関銃のように話したりしがちです。
相手にしっかり自分の意見を伝えるために、努めてゆっくりと、少しずつ脳内を整理しながら話しましょう。完璧な文章になっている必要はまったくありません。また、無理に自然に会話する必要もありません。自然にしようと心がけすぎると、かえって不自然になることが多くなってしまいます。
話しかける必要なし!日常会話術
仕事の合間の日常会話においては、自分から相手に話しかける必要はまったくありません。挨拶が済んだら、沈黙でOKです。気まずい雰囲気が流れても、気にしてはいけません。
コミュ障の人は自身が発する会話を完璧に組み立ててから、話し出したいと考えがち。しかし、うまくいかなかった過去のトラウマを多く抱えていて、話し出す直前に失敗を思い出して緊張してしまうことも多いです。そうすると一連の工程がうまく組み立てられない場合も少なくありません。
うまく話し出せなかったと意識すると、さらに緊張が増して吃音(きつおん:どもり)になったり、声が大きくなったり、裏返ったり、体の動きが大きくなったりするケースも。。
また、自身の言葉に自信がないことから、逆に黙り込んだり、言葉を発しても俯いて話し、非常に小さな声なので相手は聞き取りにくかったりするパターンもあります。
解決策としては、自分から会話の糸口を探すのではなく、まずは相手が話しかけてくれるのを待つのがおすすめです。
話しかけられたらニュアンスだけをつかもう
相手が言葉を発した場合も、コミュ障の人は相手の会話のすべてを理解し、返答を自身の中で組み立ててから、話そうとする傾向があります。裏を返せば相手に対して、たいへん丁寧な対応をしていると言えます。
しかし、あえて相手を完全に理解することをあきらめてみるのも一案です。一般的に人は相手の会話の一語一句をすべて理解しようとは、思っていません。相手の会話の要素を適当に抜き出してニュアンスをつかみ、それに対して返答しているだけなのです。
質問はキーワードを横に広げるとカンタン
相手が話した内容は、キーワードを把握するのみでOKです。完璧に把握する必要はなく、ライトな感覚で、おおよそで大丈夫だと自分に言い聞かせましょう。
たとえば、相手が「最近、ラーメンの食べ歩きにハマってるんですよ」と話しかけてきたとします。それに対し、「私もラーメンが好きで週に4日は食べます。最近ハマっているのは、家系です。とくに○○区の○○ラーメンには、週に1回は行かないと禁断症状がでます」などと自分に当てはめて、完璧な返事をする必要はありません。
一旦は頷くか同調した後、「ラーメン」と「食べ歩き」、「ハマる」の3つのキーワードに対して、5W1Hで横に広げて質問するだけでOKです。たとえば、つぎのとおりです。「ラーメン美味しいですよね、僕も好きです。(同調) 〇〇さんはいつ頃からラーメンにハマってるんですか?(When)」といった形です。
ほかには「どこのラーメン屋が一番美味しかったですか?(Where)」「どんなラーメンが好きですか?(What)」「ラーメンのどんなところが好きですか?(Why)」のように、5W1Hで横に広げて質問すると会話が続きます。
相槌+言い換えを心がける
相槌は「さしすせそ」と「あいうえお」がまずは基本です。「さしすせそ」は、「さ→さすがですね」「し→(それは)知りませんでした」「す→すごいですね」「せ→センスいいですね」「そ→そうですね、そうなんですね」。
「あいうえお」は、「あ→ありがたい!」「い→いえいえ」「う→運が悪かったですね」「え→縁がありますね」「お→恩にきます」。
しかし、「そうですね」のような相槌で終わってしまうと、会話は続きません。そこで便利なのが、相手の話を言い換えて付け加える方法です。たとえば、「今度うちの娘が成人式でさ」と言われたら「おめでとうございます。娘さん20歳になられるんですね」や、「え、〇〇さん20歳の娘さんがいらっしゃるんですか?」などと返します。
コミュ障は頭の回転が早い人が多い傾向にあるため、そのような言い換えをするだけの会話なんて不毛と思い、不必要な会話は避けるため黙ったりスルーしたりしがちです。しかし、日常会話とは8割以上が不毛なもので成り立っていても構わないものだ、という認識を持ちましょう。
質問されたら、「And You?」をプラス
質問されたら、回答のあとに「And You?」で返しましょう。「最近何かハマってるものありますか?」と聞かれたら「僕はゲームですかね、〇〇さんは?」と質問してあげると、会話が継続します。
コミュ障クリエイターとして活躍しよう
コミュニケーションが苦手な人でもできるコミュニケーション術をたくさん紹介いたしました。大切なことなので繰り返しますが、コミュ障を無理に治す必要はありません。「コミュ障のクリエイターはクリエイティブな仕事をする」と高く評価している大物プロデューサーや経営者もいるのが現状です。そのため、無理をして変わる必要はまったくないのです。
誰も無理やり矯正することはできませんし、そうする必要もありません。あなたは今のあなたのままで素晴らしいし、既にクリエイターという職に就いている、もしくは就きたいと考えている時点で十分に立派です。ビジネスシーンではコミュニケーションTIPSをうまく使いこなしながら、コミュ障のまましっかりと仕事をこなしていきましょう。