
黄色いラバーダックが海岸の岩に貼り付き、荒波に何日も耐え続ける。この光景を可能にしたのは、AIが設計した水中用超強力接着剤です。従来の接着剤が水に弱い中、日本と中国の研究チームはフジツボなど海洋生物の粘着メカニズムをAIに学習させ、1年以上も塩水中で機能する接着剤を開発しました。
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従来の接着剤が抱える根本的な限界

水漏れするパイプや屋根の修理を経験した人なら、接着剤の限界を実感したことがあるでしょう。瞬間接着剤は湿気に触れると急速に硬化するため使用できる時間はわずかで、岩石や配管のような凹凸のある表面では亀裂が入りやすく、塩分と湿気のある環境では性能が著しく低下してしまいます。
一方、ハイドロゲル(水分を大量に含むゲル状の材料)は柔軟性に優れた代替案として注目されてきました。医療分野では深い傷の封止や手術中の絆創膏として活用が期待され、義肢装具やウェアラブル生体センサーのコーティング材としても有望視されています。
しかし、ハイドロゲルには致命的な欠点がありました。材料の伸縮性が高いほど粘着性が低下するという、相反する性質を持っているのです。人体は湿潤で凹凸があり、塩分を含む環境であるため、医療用途に求められる条件は特に厳しいものとなります。
さらに困難だったのは、AIを使った材料開発においてもハイドロゲルが大きな壁となっていたことです。硬質材料は明確に定義された構造と特性を持つためAIでのモデル化が比較的容易ですが、ハイドロゲルは水中で膨張する柔らかい分子で構成され、分子同士が複雑に絡み合う3D構造を持っています。AIによる予測が極めて困難とされ、これまでの研究もハイドロゲルの膨張予測程度に留まっていました。
では、この二重の難題をどう解決したのでしょうか。
自然界の粘着マスターとAIの融合
参照:nature video
研究チームが注目したのは自然界でした。細菌からフジツボ、ムール貝、カタツムリまで、約200種の生物が濡れた表面でも強力に付着できる粘着性タンパク質を分泌しており、剥がすのに工具が必要なほど強力な粘着力を発揮するものも存在します。研究チームは既存のタンパク質データベースを調査し、水中でも粘着性を保持できるアミノ酸配列(タンパク質を構成する基本単位の並び)を特定しました。天然の接着メカニズムを模倣して180種類のハイドロゲルを設計・製造し、各々の粘着強度、水中での膨張率、流水中での安定性を測定したのです。
このデータを基に、AIに粘着性向上のパターンを学習させ、より強力な接着剤の分子設計を提案させました。AIの提案を実際に製造してテストし、その結果を再びAIにフィードバックする改良サイクルを3回繰り返した結果、上位3つのハイドロゲルは元の訓練データを大幅に上回る性能を示しました。特に「R1-Max」と名付けられたゲルは、セラミック、ガラス、金属表面に約1キログラムの重量を支えながら塩水中で1年以上粘着し続けています。冒頭のラバーダック実験では、湿った滑りやすい海岸の岩という接着剤にとって最悪の条件下で、波に打たれながらもフジツボのように頑固に粘着し続けました(上記動画)。
大きな絆創膏状に成形したハイドロゲルは、水を噴出する破裂したパイプを瞬時に封止し、5か月以上にわたって漏れを防ぎました。マウスでの実験では皮下に挿入しても顕著な免疫反応や副作用は見られず、生体適合性も確認されています。
従来の技術的限界を、自然界の知恵とAIの力で見事に突破した成果といえるでしょう。
まとめ

いかがだったでしょうか?
AIが自然界の知恵を学習し、従来技術では不可能だった水中接着剤を実現したこの研究は、材料科学における重要な転換点となっています。ラバーダックを海岸の岩に貼り付けるという印象的な実験から、破裂した水道管の5か月間の封止まで、実用性の高い結果が次々と示されました。研究チームは現在、R1-Maxの粘着メカニズムの解明を進めており、さらに高性能な接着剤の開発につながると予想されます。ルッソ氏が指摘するように、AIによる材料設計は実験的な段階を超え、実際の問題解決に貢献する新たな時代の扉を開いたのです。
参考資料:AI Designs Underwater Super Glue That Grips Like a Barnacle
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