
AI需要の急増に伴い、データセンターのエネルギー消費と冷却の問題が深刻化している。そんな中、ワシントン州のスタートアップStarcloudが、全く新しい解決策を打ち出した。それは、データセンターそのものを宇宙に持っていくというアイデアだ。SF映画のような話に聞こえるかもしれないが、すでに実現に向けて動き出している。
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宇宙にデータセンターを作る理由

2025年11月、小型冷蔵庫ほどのサイズの衛星が地球の軌道に打ち上げられる。これがStarcloudの最初の一歩、Starcloud-1だ。重量わずか60キログラムのこの衛星には、NVIDIA H100 GPUが搭載されている。データセンター向けの最先端GPUが宇宙空間に設置されるのは、これが初めてのことだ。
なぜ今、データセンターを宇宙に持っていく必要があるのか?その答えは、地球上のデータセンターが直面している課題にある。現在、多くのデータセンターは冷却のために大量の淡水を使用している。蒸発塔と呼ばれる設備で水を蒸発させることで、機器から発生する熱を逃がす仕組みだ。AIの計算処理が増えれば増えるほど、冷却に必要な水の量も増えていく。さらに、データセンターを稼働させるための電力も膨大で、再生可能エネルギーの利用が進んでいるとはいえ、世界中で増え続ける需要に追いつくのは容易ではない。ところが宇宙空間には、これらの問題を根本から解決できる条件が揃っている。
まず冷却だ。宇宙には空気がない真空状態のため、赤外線放射によって機器の熱を直接宇宙空間に逃がすことができる。水は一滴も必要ない。深宇宙そのものが、無限に広がるヒートシンク——熱を吸収する場所——として機能するのだ。
次にエネルギーの問題。地球の軌道上では、太陽光が24時間途切れることなく降り注ぐ。雲もなければ、夜もない。太陽光パネルさえあれば、ほぼ無限のエネルギーを得られる。バッテリーも、バックアップ電源も不要だ。Starcloudの共同創業者でCEOのフィリップ・ジョンストン氏は、「宇宙では、ほぼ無制限で低コストの再生可能エネルギーが得られる」と語る。同氏によれば、環境への負荷は打ち上げ時のみで、その後の運用期間全体で見ると、地球上でデータセンターを稼働させる場合と比べて二酸化炭素の排出を10分の1に抑えられるという。
コスト面でも優位性がある。打ち上げにかかる費用を含めても、エネルギーコストは地上の10分の1になると同社は試算している。Starcloud-1は、これまで宇宙で稼働してきたどの計算システムと比べても100倍の処理能力を持つ。この性能があれば、宇宙空間でも地上と同じような高度なAI処理が可能になる。
では、その処理能力は具体的にどう使われるのだろうか?
宇宙で動くAIが変える世界

宇宙データセンターの最も有力な活用先は、地球観測データのリアルタイム分析だ。
現在、地球を観測する衛星は、カメラによる光学画像だけでなく、人間の目には見えない波長の光を捉えるハイパースペクトル画像や、電波を使って地形の詳細な3Dマップを作るSAR(合成開口レーダー)など、さまざまな方法でデータを収集している。特にSARは膨大なデータを生み出す。ジョンストン氏によれば、その量は毎秒約10ギガバイト。このデータを地球に送り、地上のデータセンターで処理し、その結果を再び必要な場所に届けるには、どうしても時間がかかってしまう。
しかし宇宙空間でデータを処理すれば、話は大きく変わる。データが収集された場所で即座に分析し、必要な情報だけを地上に送ることができる。応答時間は数時間から数分へと短縮されるのだ。この速度の違いが命を救うこともある。山火事の検出や遭難信号への対応といった緊急性の高い場面では、数分の遅れが致命的になる。また、作物の種類を識別したり局地的な気象を予測したりする農業分野でも、リアルタイム処理が大きく役立つ可能性がある。
StarcloudがNVIDIA GPUを選んだのには明確な理由がある。ジョンストン氏は「地球ベースのデータセンターで実行できるワークロードと競争力を持つ必要があり、NVIDIA GPUはトレーニング、ファインチューニング、推論の面で最も高性能だ」と説明する。スタートアップ向けのNVIDIA Inceptionプログラムのメンバーでもある同社は、技術サポートやNVIDIAの専門家、GPUへのアクセスといった支援を受けており、ジョンストン氏も「NVIDIA Inceptionの一員であることは極めて重要だった」と語っている。同社はさらに意欲的な挑戦も計画している。Google for Startups Cloud AIアクセラレーターの卒業生でもあるStarcloudは、GoogleのオープンモデルであるGemmaを、H100 GPU上で軌道上で稼働させる予定だ。これが成功すれば、複雑な言語処理を必要とする大規模言語モデルも、宇宙空間で問題なく動作することが証明される。将来の打ち上げでは、NVIDIA Blackwellプラットフォームの統合も検討されている。ジョンストン氏によれば、現在のNVIDIA Hopperアーキテクチャと比べて最大10倍の性能向上が期待できるという。
ジョンストン氏は「10年後には、ほぼすべての新しいデータセンターが宇宙空間で建設されるようになる」と予測する。この予測が現実になるかどうかは、まだ誰にもわからない。しかし11月に打ち上げられるStarcloud-1は、その可能性を試す最初の一歩として、確かに記録されることになるだろう。
まとめ

いかがだったでしょうか?
Starcloudが目指す宇宙データセンターは、AIの進化と地球環境の保護を両立させる可能性を秘めている。無限の太陽光エネルギー、水を使わない冷却、そしてリアルタイムでのデータ処理——これらは、これまで地上では解決できなかった課題への答えかもしれない。11月に打ち上げられるStarcloud-1は、その実現可能性を試す最初の挑戦だ。10年後、私たちが当たり前のように使っているAIサービスの多くが、実は宇宙で処理されている。そんな未来が、もうすぐそこまで来ている。
参考資料:How Starcloud Is Bringing Data Centers to Outer Space
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