
2025年9月、AI業界に大きな変化の波が押し寄せています。中国のAlibaba社が発表した「Qwen3-Omni」は、テキスト・音声・画像・動画すべてを理解し、しかも完全無料で使えるAIモデルです。OpenAIやGoogleが有料化を進める中、なぜAlibabaは無料公開に踏み切ったのか。その真意を探ります。
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「オムニモーダル」という新時代 – 4つの感覚を持つAIの誕生

Qwen3-Omniが注目される理由は、「オムニモーダル」という技術にあります。オムニモーダルとは「複数の感覚や入力方式を同時に扱う」という意味で、人間が目で見て、耳で聞いて、文字を読むように、AIも複数の方法で情報を受け取れる技術です。OpenAIのGPT-4oがテキスト・画像・音声の3つを統合した「オムニ」モデルとして2024年に話題になりましたが、Qwen3-Omniはさらに動画を加えた4つの入力形式に対応しています。従来のAIが音声や視覚機能を後付けしていたのに対し、Qwen3-Omniは最初からすべてのモダリティを統合して設計されており、この設計思想の違いが処理速度に決定的な差を生み出しています。
音声への応答はわずか0.234秒、動画処理でも0.547秒という驚異的な速度を実現し、人間の会話における自然な応答速度に迫るレベルでリアルタイムでの対話が可能になりました。この背景にあるのが「Thinker-Talker」という独特な構造です。考える部分(Thinker)と話す部分(Talker)を分離することで、推論しながら同時に自然な音声で応答できる仕組みを実現し、翻訳時の韻律や音色の維持といった高度な処理まで可能にしています。
性能面でも圧倒的な結果を残しています。36のベンチマークテストで22項目において最高スコアを記録し、特に数学問題のAIME25では65.0点を獲得してGPT-4oの26.7点を大幅に上回りました。音声認識においてもWenetspeechで4.69という低いエラー率を達成し、GPT-4oの15.30を大きく下回る優秀な結果を示しています。さらに実用性を高めているのが対応言語の幅広さです。テキストでは119言語、音声入力で19言語、音声出力で10言語に対応し、広東語などの方言まで含んでいます。
これほど高性能でありながら、なぜ無料で提供されるのでしょうか。その戦略的意図を探ってみましょう。
無料という戦略の裏側 – Apache 2.0ライセンスが意味するもの

Qwen3-Omniが業界に与える最大のインパクトは、この高性能AIが完全無料で提供されている点にあります。「Apache 2.0ライセンス」という形式で公開されており、これは企業が商用利用・改変・再配布すべてを自由に行えるライセンスです。つまり、どんな企業でも自社サービスにQwen3-Omniを組み込んで収益を上げることができ、一切の使用料を支払う必要がありません。
この無料戦略の衝撃度は、競合他社の価格設定と比較するとより鮮明になります。OpenAIのGPT-4oやGoogleのGemini 2.5 Proは有料サービスとして提供されており継続的な費用が発生しますが、Googleのオープンソース版であるGemma 3nでさえ出力がテキストのみに限られているのが現状です。Alibabaは用途に応じて3つのバージョンを巧妙に使い分けています。音声・動画・テキスト入力を処理してテキストと音声の両方で出力する完全版の「Instruct」モデル、推論タスクに特化してテキスト出力のみの「Thinking」モデル、そして音声キャプション専用の「Captioner」モデルです。この戦略により、ユーザーは目的に応じて最適なバージョンを選択できる仕組みが整っています。
完全無料とはいえ、AlibabaはAPI経由でのサービスも提供しており、その価格設定は極めて競争的です。テキスト入力は100万トークンあたり0.25ドル、音声出力込みでも100万トークンあたり8.76ドルという設定で、無料版で試用したユーザーがAPI版の利便性を求めて移行する流れを想定していると考えられます。Apache 2.0ライセンスには特許ライセンスも含まれているため、企業がモデルを自社システムに統合する際の法的リスクも軽減されています。これにより大企業でも安心してQwen3-Omniを採用でき、Hugging Face、Github、AlibabaのAPI経由という複数の利用経路が用意されているのも特徴的です。
この戦略の背景には、オープンソースによるエコシステム構築という長期的な狙いがあると推測されます。無料で高性能なツールを世界中に提供することで、開発者や企業が自社のプラットフォームを使用し、結果的にAlibaba Cloudの他のサービス利用につながる可能性を秘めているのです。
まとめ

いかがだったでしょうか?Qwen3-Omniの登場は、AI業界の勢力図を大きく変える可能性を秘めています。技術的な優秀さと戦略的な価格設定により、これまで大手テック企業の独壇場だったAI市場に新たな選択肢を提示しました。Apache 2.0ライセンスによる完全無料公開は、世界中の企業や開発者にとって大きなチャンスとなるでしょう。無料で高性能なAIが手に入る時代が、いよいよ現実のものとなったのです。
参考資料:China’s Alibaba challenges U.S. tech giants with open source Qwen3-Omni AI model accepting text, audio, image and video
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