OpenAI研究者が実証!20秒の『思考時間』がAIの性能を大きく向上

AIの性能向上において、これまでは大規模なデータと計算能力の拡大が重視されてきました。しかし、OpenAIの研究者ノーム・ブラウン氏は「考える時間」という新たな観点を示し、AI開発の方向性に変化をもたらしています。
本記事では、思考時間がもたらすAIの性能向上、o1モデルが示す実践的な成果、企業での具体的な活用シーンについて紹介していきますので、ぜひ最後までご覧ください!

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思考時間がもたらすAIの性能向上

AIの性能向上といえば、これまで大量のデータを学習させることが一般的でしたが、OpenAIの研究チームが開発したポーカーAI「Libratus」での実験により、異なる可能性が見出されました。
従来のAI開発において、モデルの規模を100倍に拡大することは大きな成果とされていましたが、「Libratus」では20秒の思考時間を与えることで、データ量を10万倍に増やした場合と同等の結果が得られたのです。この成果の背景には「システム2思考」と呼ばれる概念があります。これは心理学者のダニエル・カーネマンが提唱した概念で、直感的な判断(システム1思考)に対して、じっくりと考えて結論を導き出す思考方法を指します。人間が複雑な問題を解決する際に用いるこの方法をAIに応用したことで、大きな進展が見られました。
ブラウン氏は自身の博士課程での研究において、3年かけてモデルを100倍に拡大した成果よりも、20秒の思考時間を与えることの方が大きな効果があったと報告しています。これは、データ量の増加に依存したアプローチには計算資源やコストの面で限界があることを示唆しています。
人間と同じで、浅く知識をつけるよりも一つの物事を深く理解する方が、最終的なアプトプットの質が高いことに似ていると感じます。AIは人間の脳の構造を参考に作られていることもあるため、人間にとっても気づきとなる観点ですね!

o1モデルが示す実践的な成果

OpenAIが開発した新しいモデル「o1」は、このシステム2思考を実践的に取り入れた例です。その性能は国際数学オリンピックの予選問題で実証され、従来のモデルGPT-4oの13%という正答率に対し、83%という高い正答率を記録しました。この成果の特徴は単なる正答率の向上にとどまりません。o1モデルは問題を解く過程で、人間の数学者のように定理の適用可能性を確認し、複数の解法を比較検討してから最適な方法を選ぶという段階的な思考プロセスを示しています。ただし、このような詳細な思考プロセスには相応の時間とコストが必要です。具体的には、入力トークン(AIが処理する文字や単語の単位)100万個あたり15ドル、出力トークン100万個あたり60ドルという運用コストが報告されていますが、ブラウン氏は「重要な問題に対しては、数分の待ち時間や数ドルのコストは十分に価値がある」と説明しています。
正確な計算や難解な思考を求める方にとって、待ち時間やコストを支払う価値はあるかと考えますが、1分1秒の時間がもったいないビジネスマンや、すぐに答えが欲しい場面においては、より高速なAIの方が価値がある可能性もあります。要するに、AIも利用ケースによって価値の基準は変わるということです。o1が必要な場面もきっとありますので、お時間がある際には一度試してみてはいかがでしょうか。

o1に関する記事は過去に紹介していますので、併せてご覧ください:
OpenAI、新AIモデル「o1」発表!GPTを超える性能で複雑な問題に挑む

企業での具体的な活用シーン

o1モデルが示すこのような高い分析能力は、様々な産業分野での活用が期待されています。
特に医療分野では、患者の症状、検査データ、既往歴など、多くの要因を総合的に分析する必要があります。専門家の見解によれば、o1モデルはこれらのデータを丁寧に検討し、より確実な診断補助を提供できる可能性を持っています。研究開発の分野では、特に太陽光パネルの開発において具体的な成果が報告されており、効率性向上のための新しい手法の検討や、既存研究データの分析に活用されています。
しかし、これらの活用には現実的な課題も存在します。システムの応答時間が従来より長くなるため、リアルタイムの判断が必要な場面では適していません。また、運用コストの増加は導入を検討する企業にとって重要な考慮点となっています。ただし、ブラウン氏は「重要な意思決定においては、この処理時間とコストは十分に価値がある」と指摘しています。例えば、がん治療法の選択のような重要な判断が必要な場面では、より多くの時間とコストをかけても、精度の高い分析結果を得ることが望ましいとされています。企業はこれらの特性を理解した上で、適切な活用場面を見極めていく必要があります。
企業によっても、スピードを求められる営業部に置くのか、深く考える戦略立案室に置くのかでは、導入ハードルが変わります。どの部署でAIが必要かも検討する必要がありそうですね!

まとめ

いかがだったでしょうか?
AIの性能向上において、データ量の増加だけが解決策ではないことが明らかになってきました。「考える時間」を確保することで、より深い分析や正確な判断が可能になり、特に高度な判断が求められる分野で新たな選択肢を提供しています。ただし、処理時間やコストなどの課題を考慮しながら、活用場面を適切に選択することが重要となります。

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