はじめに
近年、3Dスキャニング技術が急速に進展しており、産業からエンターテイメントまで多くの領域でその影響が見られます。
例えば、製造業ではプロトタイプの作成が簡単になり、ゲームや映画ではよりリアルなキャラクターと環境が作成されています。
このような状況の中で、アップルが3Dスキャン技術に参入するというニュースは業界全体に大きな衝撃を与えています。特に、iOSという広く普及したプラットフォームでこのような高度な技術が利用できるようになることは、一般ユーザーだけでなく開発者にとっても大きなメリットがあります。
この記事では、アップルが最近発表した「Object Capture」について詳しく解説します。
この機能がどのように実際のオブジェクトをスキャンして3Dモデルを作成するのか、どのデバイスで利用可能なのか、さらにはARコードとどのように連携するのかについても触れていきます。
Object Captureとは?
今年のWWDC(Appleの年次開発者会議)で、AppleがiOS向けの新機能「Object Capture」を発表すると予告されました。
この機能は、3Dオブジェクトスキャンとモデリングを手軽に行えるように設計されています。
以下のツイートを見ていただくとイメージが湧きやすいです!
デベロッパー向けの3DキャプチャーAPIなのですが、macOS MontereyのObject Capture APIを活用すると、iPhoneやiPadで撮った複数の写真から、AR向けの高品質3Dモデルを簡単に生成できます。この過程は全自動で行われ、撮影方法も対象物の周りを1周撮影するだけです。
このAPIはフォトグラメトリ技術を用いて、撮影した写真をUSDZ形式に変換を行い、USDZファイルは、AR Quick Lookで直接閲覧したり、Xcodeのプロジェクトに簡単に組み込んだり、専門的な3Dコンテンツ制作プロセスで利用することができます。
これまでは、3DCGモデルデータを作る為には高い技術が必要で、かなりのコストがかかってしまっていたのですが、Object Captureを使うと手間も少なく誰でも3Dモデルの作成が可能となります。
参照元:Apple
https://developer.apple.com/jp/augmented-reality/object-capture/
フォトグラメトリとは?
フォトグラメトリは、特定の物体や環境を多角度から撮影し、その集合写真をコンピュータで詳細に解析することで、三次元のコンピュータグラフィックスモデル(3DCG)を生成する技術です。
この手法は、近年の映画制作やビデオゲーム開発において、3DCGモデルを効率よく作成するための一つの選択肢としても採用されています。
この技術は、小さなアイテムやオブジェクトだけでなく、地形分析や測量活動にも拡張されています。
以前は、3DCGモデルを作成するには、3Dスキャナのような専門的な高価な機器が必要でしたが、コンピュータの処理能力が向上し、カメラ技術も進化してきたため、一般的なデジタルカメラやスマートフォンでも高品質な3Dモデルを生成することが可能になっています。
しかし、技術進化はしてはいるものの、フォトグラメトリを用いて3DCGモデルを生成する際には、大量の写真データの解析が必要であり、そのためには高性能のPCが必須です。
加えて、解析作業自体が時間を要することが多いため、時間とリソースがかかる場合もあるという点に注意が必要です。
Object Captureの特徴
短時間で3DCGモデルを作成できる
前述した通り、以前は3DCGモデルを生成するためには高度なスキルと多くの時間、さらには特別な機器が必要でしたが、Object Captureの導入により、その全てが数分で可能になりました。
MacとiPhoneまたはiPadさえあれば、特殊なハードウェアは不要で、3DCGモデルデータを非常に短時間と手軽に生成できるようになったことは、驚くべき革新と言えるでしょう。
ARやXRでも使用が可能
生成された3DCGモデルデータは、ARやXRのアプリケーションで活用することができます。
具体的には、作成した3DモデルをAR環境で視覚的に展示することが可能です。
これは、例えば製品デモンストレーションや教育用途、さらにはエンターテイメントまで、多くの分野で新しい体験を提供する機会を広げることになります。
短時間で高品質の3DCGモデルを作れるようになったことで、ARやXRのアプリケーション開発がさらに手軽で効率的になり、多くの人々がこれらの先進的なテクノロジーを活用できるようになると考えられます。
Object Captureの概要
iOS 17での実装
「Object Capture」は、近日中に公開されるiOS 17で正式に実装される予定です。
これはAppleがこの新機能にかなりの自信を持っている証拠であり、iOSユーザーには待望のアップデートとなるでしょう。
対応デバイス
この新機能は、iPhone 12 Pro、iPad Pro 2021、およびそれ以降のモデルで利用可能です。
古いモデルでは利用できないため、最新のデバイスを持っている方がこの機能を最大限に活用できます。
アプリリリースの時期
具体的なリリース日はまだ発表されていませんが、アプリのリリースは数週間後とされています。
今後どのように変化していくのか
「Object Capture」の導入により、3Dオブジェクトスキャンが手軽に行えるようになることで一般化され、多くの新たな用途が考えられます。
以下に、注目すべき未来の展望をいくつか紹介します。
ファッション業界での利用
3Dスキャン技術を用いて、衣服やアクセサリーをリアルタイムで3Dモデルとして表示することができ、オンラインショッピングにおいても試着に近い体験が可能になるでしょう。
ゲーム開発への応用
ゲーム開発者は、リアルな物体をスキャンしてその3Dモデルをゲーム内で使用することができます。
これにより、よりリアリスティックなゲーム環境を容易に作成できるようになるでしょう。
家具・インテリアのプレビュー
家具やインテリアアイテムを3Dスキャンして、それをARで自分の家に仮想配置することで、購入前に商品が自宅の空間にどのようにフィットするかを確認することができます。
車両設計とカスタマイズ
設計やカスタマイズのプロセスが大幅に効率化されます。ユーザーは、仮想環境内で車両の改造や設計を試すことができるでしょう。
アーキテクチャと不動産
建物や部屋を3Dスキャンして、仮想ツアーを作成することが可能です。これは不動産業界で特に有用であり、物件を実際に訪れることなく内覧できるようになるでしょう。
上記のような用途以外にも、医療、教育、エンターテイメントなど、多くの分野でこの新機能が活用される可能性があります。特に、ARとの連携によって、より多くのインタラクティブな体験が提供されるでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
「Object Capture」は、3Dオブジェクトスキャン技術を手軽に一般の人々に提供するものとして、大きな進歩と言えます。これにより、今後より多くの人々が3DモデリングやARの世界に触れる機会が増え、一般化していくと思います。
また、この新機能は、一般ユーザーが簡単に3Dオブジェクトを作成できるようになるだけでなく、開発者にも新たな影響を与えていくと思います。
例えば、オンラインショッピングアプリでの3D商品表示や、教育アプリでのインタラクティブな教材作成などが考えられます。
iOS 17のリリースとともに正式に利用可能になるこの機能には、多くの期待が寄せられています。
将来的には、更なるデバイス対応や機能拡張が行われる可能性もあり、この領域でのイノベーションが加速するでしょう。