暗記から推論へ―Nvidia RLPが実現するAIの新しい学習プロセス

AIの学習方法が大きく変わろうとしている。Nvidiaの研究チームが発表した新技術「RLP(強化学習事前学習)」は、AIモデルに「予測する前に考える」という能力を最初から教え込むものだ。従来の学習方法とは何が違うのか、そして、この変化は私たちが使うAIにどんな影響をもたらすのだろうか。

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従来の学習法の限界―AIは「暗記」しかしていなかった

現在のLLM(大規模言語モデル)は、まず膨大な量のテキストを使って「次トークン予測」という方法で学習する。トークンとは単語や文字の単位のことで、モデルは「この文章の次に来る単語は何か」を延々と当て続けることで、文法や事実、言葉と言葉のつながりを身につけていく。この学習方法は、巨大なパターン認識だ。大量の文章を読み込んで、「こういう文脈では次にこの言葉が来やすい」という統計的なパターンを記憶していく。しかし、この方法だけでは深い推論能力が育ちにくい。複雑な問題を段階的に解いていく能力や、筋道を立てて考える力は、後から別の訓練で教え込む必要がある。具体的には、教師あり微調整(SFT)や人間のフィードバックからの強化学習(RLHF)と呼ばれる手法を使い、キュレーションされた専門的なデータセットで「思考の連鎖(CoT)」―推論を段階的に展開する能力―を学習させていく。
Nvidiaの研究チームは、この二段階方式に根本的な問題があると指摘する。論文によれば、人間の理解は「線形的なトークンごとのプロセスではなく、むしろ入力と事前知識の並列的な統合である」という。私たちが何かを理解するとき、単語を一つずつ追いかけているわけではない。読みながら同時に考え、既に知っていることと結びつけ、意味を構築していく。ところが従来の事前学習には、この「考えながら理解する」というメカニズムが欠けている。研究チームによれば、この順序こそがモデルの深い推論能力を最初から発展させることを妨げているという。で
は、どうすれば良いのか。答えがRLPにある。

RLPが変える学習の未来―「考えてから答える」を最初から

RLP(強化学習事前学習)は、この学習プロセスを根本から組み替える。最大の特徴は、モデルが次の単語を予測する「前に」、まず内部で思考を生成させる点だ。
仕組みはシンプルだ。モデルは与えられたテキストを読み、予測する前に内部で「思考」を作り出す。その思考を元の文脈に加えた上で、次の単語を予測していく。モデルは「思考なし」と「思考あり」の予測を比較され、思考が精度を向上させた場合にのみ報酬を受け取る。この報酬は自動的に計算されるため、人間がラベル付けしたデータも外部の検証システムも必要ない。
実験結果は明快だ。Qwen3-1.7Bというモデルで試したところ、RLPは標準的な継続事前学習よりも17%性能が向上した。ベースラインモデルを35倍のデータで訓練しても、RLPの優位性は変わらなかった。別のモデルNemotron-Nano-12Bでは、データのほんの一部を使うだけで35%の改善を達成している。Nvidiaの応用深層学習研究担当副社長であるBryan Catanzaro氏は、RLPが既存の学習段階を置き換えるものではなく、その効果を増幅させるものだと説明する。「RLPは事前学習中にモデルに予測する前に考えることを促し、より一貫性のある推論スタイルを内部化するのを助けます」
実用面での意味は大きい。財務分析や法的文書の要約といった、複数のステップを踏む必要がある作業では、この推論能力の向上が信頼性の高い出力につながる可能性がある。
もう一つ重要な点がある。RLPで訓練されたモデルは、後の微調整で学んだことを忘れない。LLM訓練では「破滅的忘却」―後の訓練で以前の学習内容を失う現象―がよく起きるが、RLPで訓練されたモデルは同じ後学習を経てもベースラインより7〜8%高いスコアを維持した。Catanzaro氏はこう語る。「次トークン予測はモデルに世界がどのように見えるかを教えます。RLPは、見ているものについてどう考えるかを教えることができます」。訓練の早い段階で探索を導入することで、単にサイズだけでなく、モデルが推論を学習する方法においてスケーリングの新しい軸が開かれる。
これは単なる効率化ではない。AIの学習プロセスそのものの変化なのだ。

まとめ

いかがだったでしょうか?
RLPは、AIに「考えてから答える」という能力を最初から教え込む技術だ。従来の次トークン予測だけでは育ちにくかった深い推論能力を、事前学習の段階から育てていく。事前学習段階における強化学習のダイナミクスについては、まだ学ぶべきことが多いとCatanzaro氏は認めている。しかし明らかなのは、AIの学習方法に新しい可能性が開かれつつあるということだ。あなたが日々使うAIツールも、いずれこうした技術の恩恵を受ける日が来るかもしれない。

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