
アラブ首長国連邦から、AI業界に新たな風が吹き込んでいます。「世界最速のオープンソースAIモデル」と称されるK2 Thinkが登場し、わずか32億のパラメータで大手モデルを凌駕する性能を実現しました。なぜ小さなモデルが巨大モデルを超えられるのか、その秘密を探ってみましょう。
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小さくても強い——K2 Thinkの驚異的な性能

AIの世界では、これまで「大きければ大きいほど賢い」が常識でした。パラメータ数(AIモデルの内部設定の数値)が多いほど、より複雑な問題を解決できるとされ、大手モデルは数兆のパラメータを持つと報告されています。ところが、K2 Thinkはこの常識を覆します。わずか32億パラメータという小規模なサイズでありながら、数学や科学の複雑な問題で大型モデルを上回る成績を収めているのです。
具体的な性能を見てみましょう。数学オリンピックレベルの難問を扱うAIME 2024では90.8点、AIME 2025では81.2点を記録しました。コーディング能力を測るLiveCodeBench v5では64.0点、科学的推論を問うGPQA-Diamondでは71.1点、OMNI-MATH-HARDでは60.7点と、技術分野全般で優秀な結果を示しています。さらに驚くべきは処理速度です。K2 Thinkは毎秒2,000トークンという圧倒的なスピードで文章を生成します。トークンとは、AIが理解する言葉の最小単位のことで、この数値が高いほど応答が速くなります。比較として、Google の高速モデルGemini 2.5 Flashでも毎秒258トークンですから、約8倍もの差があるのです。
K2 Thinkは数学的推論を主目的として開発されましたが、実際には多様な分野で汎用性を発揮しています。カジュアルな会話ではなく、段階的な計画と実行戦略によって構造化された問題解決に特化している点が、他のモデルとの大きな違いといえるでしょう。
では、このような圧倒的な性能は、一体どのような技術によって実現されているのでしょうか。
技術とハードウェアが生み出す圧倒的な速度

K2 Thinkの高性能は、偶然の産物ではありません。モハメド・ビン・ザーイド人工知能大学(MBZUAI)とG42 AIの共同開発チームが「効率的な推論設計」というコンセプトのもと、6つの統合技術を巧妙に組み合わせて実現しています。
1つ目の教師あり微調整(SFT)では、長い思考の連鎖を含む例文を使ってモデルを訓練し、2つ目の検証可能な報酬を用いた強化学習(RLVR)により、正解にたどり着く過程そのものを評価して推論パターンを改善させています。
3つ目のエージェント的計画は、回答生成前に問題構造を理解し解決手順を組み立てる仕組みで、4つ目のテスト時スケーリングでは、Best-of-Nサンプリングにより複数の回答候補から最適解を選択します。そして5つ目の投機的デコーディングが、速度向上の核心技術です。従来のAIが一語ずつ順番に文章を生成するのに対し、複数の単語を同時に予測し並行処理することで、大幅な時間短縮を実現しています。6つ目のハードウェア最適化では、Cerebras社のWafer-Scale Engine(WSE)という特殊なシステムを採用しました。このシステムにより、最大32,000トークンの長文応答をわずか16秒で処理できます。同じ処理を標準的な高性能GPUで行う場合は2.5分以上かかるため、約10倍の速度差を実現しているのです。
特筆すべきは、開発に使用されたAIチップがわずか2,000個だったことでしょう。主要な米国AI企業が通常使用する規模をはるかに下回るリソースで、これほどの成果を達成している点は注目に値します。
さらにK2 ThinkはApache 2.0ライセンスで完全オープンソース化されており、訓練データ、モデルの重み、微調整コード、推論ツール、展開インフラまで含めて商用利用も自由です。
限られたリソースと巧妙な技術設計、そして完全な透明性——K2 Thinkはまさに、AIの新時代を象徴するモデルといえます。
まとめ

いかがだったでしょうか?
K2 Thinkの登場は、AI業界の「大きさこそ正義」という従来の考え方に一石を投じる出来事といえます。わずか32億パラメータで大型モデルに匹敵する性能を実現したことは、今後のAI開発において効率性と賢い設計の重要性を示しています。また、完全オープンソースとして公開されたことで、世界中の研究者や開発者が自由に活用できる環境が整いました。AIの進歩は必ずしも巨大な計算リソースに依存するものではなく、創意工夫によって新たな道筋が開けることを、K2 Thinkは見事に証明してくれたのです。
参考資料:K2 Think arrives from UAE as ‘world’s fastest open-source AI model’
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