
バーチャルリアリティで味を感じる—そんなSF映画のような体験が現実になりつつあります。
オハイオ州立大学の研究チームが開発した切手サイズのデバイスが、デジタル空間での味覚体験を可能にし、メタバースに新たな次元をもたらそうとしています。このテクノロジーは五感すべてを刺激する未来への第一歩なのです。
ARCHETYP Staffingでは現在クリエイターを募集しています。
エンジニア、デザイナー、ディレクター以外に、生成AI人材など幅広い職種を募集していますのでぜひチェックしてみてください!
ボタンから募集中の求人一覧ページに移動できます。
「e-Taste」が実現する味覚シミュレーション

オハイオ州立大学の研究者たちが開発した「e-Taste」は、その小ささからは想像できないほどの可能性を秘めています。切手よりも小さいこのデバイスが、私たちの味覚体験に革命をもたらそうとしています。このデバイスの素晴らしさは、塩味、甘味、酸味、苦味、旨味という5つの基本的な味を単純な化学物質で表現できる点にあります。甘味にはグルコース、酸味にはクエン酸といった基本成分を適切に組み合わせるだけで、コーヒー、ケーキ、レモネードといった多様な味を生み出すのです。
e-Tasteの設計はシンプルでありながら非常に効果的です。シャツのボタンほどの大きさの立方体と、そこから伸びるガム状のストリップから構成され、下の歯に掛けて使います。立方体の中には味成分がそれぞれ別々の部屋に貯蔵されており、センサーからの信号に応じてポンプが作動し、成分がゲルストリップ上で混ざり合った後、舌の上に届けられます。このデバイスの特筆すべき点は完全ワイヤレスであること。実証実験では、サンフランシスコでレモネードにセンサーを浸した人が、約4,000キロメートル離れたオハイオ州の人の舌に、リアルタイムでその味を「転送」することに成功しました。受け手側のデバイスは45分間にわたって味を再現し続けたのです。
研究チームの実験では、約90%の参加者がレモネードの味を正確に識別し、その酸味の強さも判断できました。ケーキの甘さも多くの参加者が認識できましたが、目玉焼きや魚のシチューなど旨味が強い料理の識別は難しかったようです。もちろん課題もあります。味覚は非常に主観的なものです。ある参加者は「通常のコーヒーメーカーを見ることなくデバイスを通じてコーヒーを味わうと混乱した」と報告しており、私たちの味覚体験が視覚や嗅覚と密接に結びついていることを示しています。また実用面では、口からデバイスをぶら下げる形状が日常使用では違和感があるかもしれません。
この技術が実用化されれば、デジタル世界で五感のすべてを使った体験への道が開かれます。それは単なるゲーム体験の向上にとどまらない、私たちの生活や仕事を変える可能性を秘めているのです。
五感を組み合わせた没入型体験の未来

e-Tasteは、VRやメタバースにおける体験の質を大きく向上させる可能性を持っています。これまでのVRやAR技術は主に視覚と聴覚に訴えかけるものでしたが、そこに味覚が加わることで、体験はより深く、リアルなものになるでしょう。
人間の感覚体験は五感が複雑に絡み合って成り立っています。食事を楽しむとき、料理の見た目、香り、食感、音、そして味が一体となって「美味しさ」を感じています。五感のうち一つでも欠ければ、その体験の魅力は大きく損なわれます。
多感覚的なエンターテイメント体験の追求は新しいものではありません。1950年代には「スメルオビジョン」が映画館に導入され、現代の4DX映画館では香りだけでなく、座席の動き、風、霧、泡などの効果で多感覚的な体験が提供されています。今年のCESでは、ソニーのゲーム「ラスト・オブ・アス」の没入型デモで、終末後の世界の匂いを体験できる環境が用意され、大きな注目を集めました。
味覚デバイスの応用可能性は非常に広範囲です。世界中の料理をバーチャルに「試食」できる料理ツアー、オンラインショッピングでの食品サンプリング、遠隔地にいる友人や家族との「共食」体験など、日常生活の様々な場面を豊かにする可能性があります。ビジネスシーンでは、食品開発のプロセスが変わるかもしれません。地理的な制約なく、即座に味のフィードバックを得られるようになるでしょう。これらの応用例は現時点では推測ですが、技術の進化によって近い将来実現する可能性は高いと考えられます。
医療分野での活用も見逃せません。研究チームによれば、e-Tasteのような装置は診断ツールとしての価値があります。長期的なコロナ後遺症や外傷性脳損傷による味覚喪失の診断、またアルツハイマー病やウイルス感染など複数の疾患の早期兆候となる味覚変化の検出にも役立つ可能性があるのです。
現在のe-Tasteが直面している最大の課題は、五感の統合です。視覚や嗅覚などの他の感覚と切り離された状態での味の再現には限界があり、今後の開発ではこれらの感覚を統合していくことが重要になるでしょう。これはAI時代のあらゆる技術開発に通じる視点です—テクノロジーがどれほど進化しても、人間体験の豊かさと複雑さを理解することが真のイノベーションにつながるのです。
まとめ

いかがだったでしょうか?
切手サイズのデバイスが私たちのデジタル体験に味覚という新次元を加えようとしています。e-Tasteのような技術は、メタバースでの体験をより豊かで多層的なものに変える可能性を秘めています。五感すべてが統合されたデジタル世界の実現にはまだ課題が残されていますが、この小さなデバイスはその重要な一歩となるでしょう。技術の進化とともに、私たちの体験の可能性も広がっていくのです。
参考記事:
A sensor-actuator–coupled gustatory interface chemically connecting virtual and real environments for remote tasting
You Can Taste Cake in Virtual Reality With This New Device
ARCHETYP Staffingではクリエイターを募集しています!
私たちはお客様の課題を解決するweb制作会社です。現在webサイト制作以外にも、動画編集者や生成AI人材など幅広い職種を募集していますのでぜひチェックしてみてください!
また、アーキタイプではスタッフ1人1人が「AI脳を持ったクリエイター集団」としてこれからもクライアントへのサービス向上を図り、事業会社の生成AI利活用の支援及び、業界全体の生成AIリテラシー向上に貢献していきます。
生成AIの活用方法がわからない、セミナーを開催してほしい、業務を効率化させたいなどご相談ベースからお気軽にお問い合わせください!
ボタンから募集中の求人一覧ページに移動できます。