はじめに
2023年8月29日から31日にかけて、Google Cloudが米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催した年次イベント「Google Cloud Next ’23」で、新しい生成AIサービス「Duet AI」が発表されました。このイベントは、Googleの最新のクラウド技術とビジョンが発表される大きな舞台であり、多くの専門家やビジネスリーダーが注目しています。
今回の記事では、このDuet AIに焦点を当てていきます。Google Workspaceに組み込まれる予定のこの新しいAIツールは、生産性の向上を大いに促す可能性を秘めています。
しかし、Duet AIが登場することで、Microsoft 365が提供する「Copilot」という同じく生成AIを活用したサービスとの競争が激化しており、両者は機能面でも価格面でも非常に似ているため、選ぶのが一筋縄ではいかない状況です。
この記事を通して、Duet AIの特長や機能、Microsoft 365 Copilotとの違い、そして生成AIがビジネスや働き方にどのような影響を与えるのかについて詳しく解説していきます。これから先、どちらのサービスが自分や自分の組織に合っているのかを考える上での参考にしていただければ幸いです。
Google Cloud Next ’23とは
Google Cloud Nextとは毎年恒例となっているGoogleのクラウドテクノロジーイベントで、今年も多くの業界関係者が一堂に会しました。このイベントは、新しい製品発表や戦略発表の場として、テクノロジー業界に多大な影響を与えるものです。
今年のGoogle Cloud Next ’23が新型コロナウイルスの影響を受けて以来、4年ぶりに対面で開催されたました。
講演では、Googleの親会社AlphabetのCEOであるズンダー・ピチャイ氏とGoogle CloudのCEO、トーマス・クリアン氏がステージに立ち、ピチャイ氏はGoogle Cloudの戦略だけでなく、生成AIがGoogleの主力事業である検索サービスにどのように影響を与えるかについても熱く語りました。
一方でクリアン氏は、AIとクラウドの融合が生む新しいビジネスの可能性に焦点を当てていました。
また、新製品として「Cloud TPU v5e」やNVIDIA H100 GPUを活用する「A3 supercomputer」の発表もありました。さらにNVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏が特別ゲストとして登壇し、Google Cloudとの新たなパートナーシップについても触れられました。
Duet AIの特徴
Googleが提供する生産性向上ツール「Google Workspace」が、「Duet AI」を追加しました。
この新しいAIツールは、働き方を根本から変える可能性を秘めています!
主な機能は以下です。
自動スライド作成
プレゼンテーションを作る際、Duet AIは文字で与えられた指示に基づいて自動でスライドを生成します。
ユーザーがクラウドストレージに保存しているデータをAIが選び、関連性のある情報を組み合わせてスライドを完成させます。これにより、手作業での時間を大幅に削減することができます。
チャットボットとの対話
Duet AIは、ユーザーがチャットボットと対話しながら作業できる機能も持っています。
例えば、「次の会議の資料を作って」といった指示を送ると、Duet AIがそれに応じてアクションを起こします。
後からの編集も容易
Duet AIが生成したスライドやドキュメントは、後から手動で編集することも可能です。これにより、AIが提案した内容に細かい調整を加えることができます。
価格と競合状況
Duet AIは月額30ドルで提供されており、これはMicrosoft 365が提供する「Copilot」と同じ価格帯です。
機能面でも価格面でも競合が激しい中、どちらを選ぶかはユーザーのニーズによって決まるでしょう。
Microsoft 365 Copilotとの比較
Duet AIが登場することで、Microsoft 365のCopilotとの競合が一層激化しています。しかし、これらのサービスは似ているようでいて、いくつか重要な違いがあります。
機能面での比較
Duet AIは特にGoogle Workspaceのスライドとスプレッドシートに強力なAI機能を組み込んでいます。一方で、CopilotはMicrosoft 365全体、特にWordやExcelに広範なサポートを提供しています。
ユーザーインターフェース
Duet AIはチャットボットとの対話形式で操作が行えます。この手法は特に新規ユーザーにとっては親しみやすいかもしれません。対照的に、Copilotはより従来のユーザーインターフェースを採用しています。
価格面での比較
価格は両者ともに月額30ドルと同じです。しかし、これは単に表面的な類似であり、各サービスが提供する価値に応じて、この価格が適切かどうかが変わってきます。
エコシステムとの整合性
Duet AIはGoogle Workspaceとの連携が前提ですので、すでにGoogleのエコシステムを活用している企業や個人には特に便利です。
一方、CopilotはMicrosoft 365とのシームレスな連携が魅力となっています。
開発者コミュニティとサポート
Microsoftは長い歴史と広いユーザーベースを持つため、一般的にはより多くのサポートとコミュニティが存在します。Googleも負けてはいませんが、この点で少し遅れを取っているかもしれません。
生成AIのビジネスへの影響
生成AI(Generative AI)がビジネスに与える影響は、単なる一過性のブームや流行りではなく、GoogleのCEO、ズンダー・ピチャイ氏も基調講演で、生成AIは今後さまざまなビジネスを変えていく可能性があると明言しています。
例えば、検索エンジンへの影響で。Google自体がその最良の例で、生成AIを用いた「Search Generative Experience」という新しい検索体験を提供する方針を示しました。これにより、ユーザーはより精緻で個別化された検索結果を得られるようになります。
また、カスタマーサービスの進化やプレゼンテーション、文書作成、データ分析などの作業が自動化され、人々がより価値のある作業に集中できるように今後なっていきます。
その他の新機能とパートナーシップ
Google Cloud Next ’23ではDuet AIだけでなく、多くの新機能とパートナーシップが発表されました。
1 Cloud TPU v5eとA3 Supercomputer
Googleは新しいクラウドインスタンス、Cloud TPU v5eと、NVIDIA H100 GPUを活用したA3 Supercomputerを発表しました。
これらは高度なデータ処理と分析、AI/MLモデルの訓練に有用で、より多くの企業が高度な計算を手軽に行えるようになります。
2 NVIDIAとの新たなパートナーシップ
NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏が特別ゲストとして登壇し、Google Cloudが最近発表したDGX-GH200をクラウドで提供する最初のCSP(クラウドサービスプロバイダー)になると発表しました。
このパートナーシップは、AIとデータ分析に関するソリューションを強化する大きなステップです。
3 Google Meetの進化
Google Meetでも新機能が追加されることが発表されました。
具体的には、会議の音声をリアルタイムで文字起こしし、それをライブキャプションとして表示する機能が追加されます。これにより、リモートワークやオンライン会議がさらに効率的になります。
今後の展望
いかがだったでしょうか?
生成AIツールの普及、特にDuet AIのようなものが広まることで、日常の業務は今後、劇的に効率化されていきます。これにより、企業は重要な戦略的業務により多くの時間と資源を割くことができます。
また、高性能なクラウドインスタンスが一般化すると、データ駆動の意思決定がより迅速かつ正確に行えるようになり、AIの進化で人々は煩雑な作業から解放され、より創造的な仕事に集中できるようになると期待されています。
AIブームが来ていますが、この波に柔軟に対応する企業とそうでない企業とでは今後大きな差が出てくると思うので、日々AIに関する情報感度を高く持って対応していきましょう!