
AIが論文を要約する時代は、もう終わりました。今、AIは研究者と並んで実験の手順を書き、ゲノムデータを読み解き、規制当局への書類さえ作っています。Anthropic社が発表した「Claude for Life Sciences」は、科学のすべての段階にAIが入り込む新しい現実を見せています。
ARCHETYP Staffingでは現在クリエイターを募集しています。
エンジニア、デザイナー、ディレクター以外に、生成AI人材など幅広い職種を募集していますのでぜひチェックしてみてください!
ボタンから募集中の求人一覧ページに移動できます。
研究室の新しい相棒

研究者がClaudeを使うようになって、まだそれほど時間は経っていません。最初は統計分析のコードを書いてもらったり、論文を要約してもらったりする程度の使い方でした。ところがAnthropic社は今、その役割を根本から変えようとしています。初期の発見から臨床への応用、そして製品化まで——研究のすべての工程を、Claudeが支えられるようにする計画です。
その中心にあるのが、Claude Sonnet 4.5という最新モデルです。このモデルの実力を示す数字があります。Protocol QAというベンチマークでは、実験室で使われる手順書——たとえば「この薬品を何グラム加えて、何度で何分間加熱する」といった細かな指示——をどれだけ正確に理解できるかが測られます。Sonnet 4.5のスコアは0.83でした。興味深いのは、人間の研究者の平均が0.79、前のモデルであるSonnet 4が0.74だという点です。つまり、人間を超えた水準に達したわけです。別の評価であるBixBenchでも、同様の改善が見られました。これは、バイオインフォマティクス——生物のデータをコンピュータで解析する分野——での能力を測るもので、遺伝子の配列を読んだり、タンパク質の構造を予測したりする作業が含まれます。
考えてみてください。実験の手順を正確に理解できるAIがあれば、プロトコルの作成を任せられます。データ解析が得意なAIがあれば、膨大な遺伝情報の中から意味のあるパターンを見つけ出せます。Anthropic社が目指しているのは、研究者が「このタスクだけ手伝って」と頼む相手ではありません。最初から最後まで一緒に仕事をするパートナーです。
しかし、性能が上がっただけでは現場は変わりません。本当に使える道具になるには、研究者が日々使っているツールと繋がる必要があるのです。
10個のコネクタが開く扉

そこで登場するのが「コネクタ」です。これは、Claudeが他のプラットフォームに直接アクセスできるようにする仕組みで、Anthropic社は今回、科学研究に特化した複数の新しいコネクタを発表しました。たとえばBenchlingです。このコネクタがあれば、Claudeは実験ノートや過去の記録を参照しながら質問に答えられます。「先月の実験で使った試薬の濃度は?」と尋ねれば、該当する実験記録へのリンクとともに答えが返ってくる仕組みです。さらに研究プロトコルや標準作業手順書、同意文書の草案まで作成できます。
BioRenderは科学論文に使われる図やイラストのライブラリで、「DNAの複製過程を示す図が欲しい」と伝えるだけで適切なテンプレートを提案してくれます。PubMedに繋がれば、数百万本の生物医学論文にアクセスでき、文献レビューが格段に速くなります。Wileyが開発したScholar Gatewayは査読済みの信頼性の高い科学文献へ、Synapse.orgは研究者同士がデータを共有し共同解析するプラットフォームへの扉を開きます。
10x Genomicsのコネクタは特に興味深いものです。これを使えば、単一細胞レベルでの遺伝子解析を、専門的なコマンドではなく普通の言葉で指示できます。「この細胞群の遺伝子発現パターンを調べて」と言えば、それで済むわけです。もちろん、Google WorkspaceやMicrosoft SharePoint、OneDrive、Teamsといった汎用ツールとも繋がっています。大規模なデータ解析のためのDatabricks、巨大なデータセットを自然言語で検索できるSnowflakeとも連携済みです。
コネクタの数が増えるほど、Claudeができることは広がります。ただ、繋がるだけでは十分ではありません。研究には、決まった手順を正確に、何度も繰り返す場面が数多くあるからです。
研究を支える新しい仕組み

科学の現場では、確立された方法を一貫して使うことが何より重要です。たとえば遺伝子データの品質チェックには業界標準の手順があり、毎回同じ基準で処理しなければ結果の信頼性が保てません。人間でも間違えることがある作業を、AIに任せるとなれば、なおさら正確さが求められます。
そこで登場するのが「Agent Skills」です。これは、特定の作業手順をClaudeに覚えさせる仕組みで、指示やスクリプト、参考資料をフォルダにまとめておけば、Claudeはそれを参照しながら一貫した方法で作業を進められます。最初に公開されたスキルは「single-cell-rna-qc」で、単一細胞RNAシーケンシング——一つ一つの細胞がどんな遺伝子を使っているかを調べる技術——のデータを、scverseという業界標準の手法に従って品質管理するものです。研究者が自分でスキルを作ることもできるため、研究室ごとの独自の手順にも対応できます。
では、Claudeは実際に何ができるのでしょうか。文献レビューでは、生物医学の論文を引用・要約し、検証可能な仮説を生み出します。Claude Codeを使えば、ゲノムデータの処理と解析を行い、結果をスライドや文書、コードノートブック形式で提示できます。規制当局への申請書類の草案作成やレビュー、コンプライアンスデータの編集も可能です。
導入を支援する体制も整っています。Anthropic社のApplied AIチームや顧客対応チームの専門家が実際の使い方を教え、Deloitte、Accenture、KPMG、PwCといった大手コンサルティング企業がパートナーとして加わっています。クラウド基盤にはAWSとGoogle Cloudが参加し、既存の顧客や提携先は、すでに幅広い科学的タスクでClaudeを使い始めています。
そして最も意義深いのが「AI for Science」プログラムです。影響力の大きいプロジェクトに取り組む研究者に、APIの利用権を無償で提供するこの取り組みは、予算の限られた研究室にも最新のAI技術を届けます。高性能なモデル、豊富なコネクタ、確実に動くスキル、そして手厚いサポート。これらすべてが揃ったとき、研究の現場で何が起きるのか——その答えは、もうすぐ見えてくるはずです。
まとめ

いかがだったでしょうか?
Anthropic社が描く未来は、AIが研究者の指示を待つのではなく、自ら発見を重ねていく世界です。Claude for Life Sciencesは、その第一歩に過ぎません。科学の世界で起きているこの変化は、おそらく他の分野にも広がっていくでしょう。AIが単なる道具ではなく、人間と並んで考え、作業するパートナーになる——その現実が、すでに研究室で始まっています。
ARCHETYP Staffingではクリエイターを募集しています!
私たちはお客様の課題を解決するweb制作会社です。現在webサイト制作以外にも、動画編集者や生成AI人材など幅広い職種を募集していますのでぜひチェックしてみてください!
また、アーキタイプではスタッフ1人1人が「AI脳を持ったクリエイター集団」としてこれからもクライアントへのサービス向上を図り、事業会社の生成AI利活用の支援及び、業界全体の生成AIリテラシー向上に貢献していきます。
生成AIの活用方法がわからない、セミナーを開催してほしい、業務を効率化させたいなどご相談ベースからお気軽にお問い合わせください!
ボタンから募集中の求人一覧ページに移動できます。



