チャットボットからパーソナライズまで!American ExpressのAI戦略

American Expressが生み出したAIビジネス変革の実例をご紹介します。
8万人の従業員を抱える大企業がどのようにしてAIを社内のさまざまな部門に導入し、目に見える成果を上げたのか。単なる技術導入ではなく、社員の満足度と業務効率を両立させる取り組みから、私たちが学べる点は少なくありません。

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「リンクではなく答えを提供する」IT支援の新時代

American Expressは日々大量のIT関連問い合わせに対応する必要がありました。従来のチャットボットは単にナレッジベースへのリンク集を表示するだけ。社員は表示されたリンクを一つずつクリックし、自分で解決策を探さなければなりませんでした。この状況を改善するため、同社は生成AIを活用した新しいチャットボットを開発しました。このシステムの特徴は、単なる情報提供ではなく、社員との対話を通じて問題を理解し、具体的な解決策を直接提供する点です。
例えば、Wi-Fi接続の問題を抱えた社員がチャットボットに相談すると、システムは段階的な解決手順を案内します。「ネットワーク設定をリセットしてみてください」という提案に続けて「解決しましたか?」と確認し、まだ問題が残っていれば次の対策を提案するという流れです。
2023年10月の導入以来、この新しいアプローチによってエンジニアへのエスカレーションが40%減少しました。これは単なる業務効率化にとどまらず、社員が問題解決を待つ時間の短縮にもつながり、全体の生産性向上に寄与しています。
技術面では、初期の自然言語処理(NLP)モデル、特にBERTフレームワークからより高度な生成AIへの移行が、この性能向上を支えています。しかし、American Expressの取り組みの価値は技術導入だけにあるのではありません。彼らが常に重視していたのは「社員の体験をいかに向上させるか」という視点です。このIT支援の成功事例は、同社のより広範なAI戦略の一部に過ぎません。
次のセクションでは、American Expressがどのように全社的なAI基盤を構築し、様々な業務領域での価値創造を実現しているのかを見ていきましょう。

最高の体験を生み出すためのAI基盤構築

American ExpressのAI導入は、偶発的な取り組みではなく、全社的かつ戦略的なアプローチに基づいています。同社は500もの潜在的なAIユースケースを特定し、優先度の高い70のプロジェクトに絞り込みました。これは単なる数の問題ではなく、会社全体としてAIの可能性と限界を深く理解していることの表れです。
この取り組みを支える技術基盤は三層構造になっています。最下層の「コアイネーブルメントレイヤー」では、開発者が一貫性のあるAIアプリケーションを効率よく構築できる「共通レシピ」を提供。その上の「オーケストレーションレイヤー」では、用途に応じた最適なAIモデルの切り替えを可能にし、最上層の「AIファイアウォール」がセキュリティを確保しています。この構造によって、安全かつ効率的なAI開発環境が実現しているのです。
金融業界のAI活用で特に重要なのは精度です。パッカー氏は「検証と精度は生成AIの聖杯」と表現しています。American Expressは検索拡張生成(RAG)などの技術を活用し、AIの回答を信頼できる情報源で補強。規制の厳しい金融業界では、ナレッジベースの維持と情報の正確性が特に重要となるため、何千もの文書の検証と最適化に多大な労力を投じています。
この基盤整備の効果は目覚ましく、「同僚ヘルプセンター」では96%という高精度を達成し、検索システムの性能は26%向上しました。さらに、GitHub Copilotの導入により9,000人のエンジニアの生産性が10%向上。現在はコード補完やテスト作成に活用されていますが、将来はソフトウェア開発ライフサイクル全体やAPIドキュメントにも拡張される予定です。
最も興味深いのは、American Expressが効率化だけでなく社員満足度を重視している点です。パッカー氏はAIツールの評価について「それが機能しているだけでなく、同僚がそれを気に入っているか」という点を強調し、実際に技術的には目標を達成したものの、社員満足度が低かったため再考されたプロジェクトもあるといいます。この姿勢は、次に紹介する最上位顧客向けサービスにも貫かれています。

AIが可能にする究極のパーソナライズ体験

American Expressの最も洗練されたAI活用事例が、最上位顧客向けの「旅行カウンセラーアシスト」です。センチュリオン(ブラック)カードやプラチナカード会員向けのこのサービスでは、カウンセラーが世界中のあらゆる旅行先について深い知識を持つ必要があります。朝にバルセロナの観光案内、午後にはブエノスアイレスのレストラン推薦など、異なる地域や内容に即座に対応するのは容易ではありません。
「旅行カウンセラーアシスト」は、ウェブの一般情報とAmerican Express独自のデータ、さらに顧客の消費行動パターンを組み合わせ、真にパーソナライズされた旅行提案を可能にしました。現在19の市場、5,000人のカウンセラーをサポートし、85%以上が時間節約と推奨品質の向上を報告しています。
注目すべきは、American Expressが「AIによる完全自動化」ではなく「AIと人間の協働」を選んだ点です。高級カード会員は、パッカー氏の言葉を借りれば「あなたのために最高の休暇を考えてくれる誰か」との人間的なつながりに価値を見出しています。AIが情報処理と分析を担当し、カウンセラーが文脈理解や共感を提供するこの相互補完的な関係が、単なる効率化を超えた顧客価値を創出しているのです。

まとめ

いかがだったでしょうか?
American ExpressのAI導入事例は、単なる効率化を超えた価値創造と、技術と人間の最適な組み合わせを示しています。重要なのは技術そのものではなく、それをどう活用して人間の経験を向上させるかという視点です。企業規模を問わず、AIを導入する際はユーザー満足度と業務効率のバランスを常に意識することが成功への鍵となるでしょう。

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