政府が推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や導入方法を解説

最近、よく話題にのぼるDX(デジタルトランスフォーメーション)。2018年には、経済産業省が推進に向けたガイドラインを取りまとめるなど、企業にとってDXの導入は緊急の課題です。

さらに今では、ステイホームが推奨されており、ウィズコロナ・アフターコロナを見すえた企業戦略を立てなくてはなりません。IoT、ICTやAIを活用するDXの導入は、このような文脈のなかでも注目されているのです。今回は、DXの定義をおさらいし、注目される背景や導入の効果、成功事例をみていきましょう。


DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DXとは、2004年にウメオ大学(スウェーデン)のエリック・ストルターマン教授が提唱した、「進化するAI、IoTなどのICTが人々の生活をよりよく変化させる」という概念です。経済産業省では、「データやデジタル技術を使って、顧客視点で新たな価値を創出していくこと」と定義されています。

つまり、DXとはスマートデバイス、SNS、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、などを取り入れたビジネスモデルを創出し、人々の生活に変革を起こすことなのです。楽曲や映画を気軽に楽しめるサブスクリプション形式も、DXの好例といえるでしょう。


今、DXが注目される背景とは

DXが注目される背景にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは、考えられる3つのポイントについて解説します。

「2025年の崖」対策として求められるパラダイムシフト

1つめは、経済産業省が発表した「DXレポート(平成30年9月)」でも指摘されている、「2025年の崖」。これは、既存のITシステムの老朽化を克服できない場合は、2025年以降、巨額の損失が生まれると警告するものです。

DXを推進するためには、データ活用に取り組まなければなりません。爆発的に増加するデータを活用できない企業は、必然的にデジタル競争に敗れる時代がすぐそこまで来ています。事業部門ごとに既存システムが構築されているうえに、過剰にカスタマイズされている企業もまだまだ多いのではないでしょうか?

このように複雑化・ブラックボックス化しているにもかかわらず、実際に既存システムにメスを入れようとすると、現場から激しい抵抗を受ける場合があるのが実情です。このような状況では、社内のデータ活用は夢のまた夢でしょう。

複雑化した既存システムを放置すれば、システムの維持管理費が高額化するのは目に見えています。社内で既存システムが連携されていないと、サイバー攻撃に対して有効な対策を打つのもままならず、システムトラブルやデータ滅失などのリスクも高くなるのです。そのため、DXに取り組み、全社をあげて横断的にデータ活用できるようにITシステムを刷新することが求められています。

新しい生活様式にあったビジネスモデルの必要性

2つめは、DXの必要性を今まで以上に強く認識する契機となった、2020年5月に発表された新型コロナウイルスを想定した新しい生活様式の提言です。人との間隔は、できるだけ2メートルあける、というもので身体的距離の確保を前提として社会生活を実践することになりました。政府が推進した働き方改革と新型コロナウイルス感染症対策が歩調を合わせるように、テレワークが当たり前の時代が到来したのです。

飲食店はテイクアウトやデリバリー中心に、アパレル店はインターネット上での接客を試みる、そんな壮大な社会実験ともいえるビジネスモデルの転換を余儀なくされた企業も多いことでしょう。いまでは生き残るために、企業の文化や風土を変革し、新しい価値を誰もが創造する必要に迫られています。

サブスクリプションモデルを受け入れる消費者マインドの変化

3つめは、消費者マインドの大きな変化です。Netflixの台頭にみられるように、消費者がモノの所有に熱狂する時代から、生活を豊かに送れるよう楽しく、役に立つ体験を増やせるサブスクリプションモデルが注目されています。

企業がサブスクリプションモデルという新しい価値の創造を提供していくためには、データを活用するDXの導入が不可欠です。そのため、IT技術を活用しながら、業務内容や組織全体の風土や文化を変革していくことが求められます。


DXを失敗しないでうまく導入する方法

DXの導入は、実際のところ成功例ばかりではありません。とあるDX研究者によると、全世界でおこなわれているDXの取り組みは、95%が失敗とのこと。なぜ失敗に終わるのかがわかれば、失敗しないでうまく導入する方法が見えてくるはずです。

失敗の大きな原因は、経営のトップがDXを本質的に理解できていないことがあげられます。そこで、失敗しないでDXを導入する方法は、トップの意識改革をまず率先しておこなうことです。既存の価値観、つまり今まで当たり前と思っていた常識や組織の振る舞いを変革しなければなりません。トップが変革を恐れない姿勢を明確にしたら、次にビジネスモデルの「成功」した姿、結果としてどうなっていたいのか、理想とする姿を具体的に示します。

トップの意識改革の必要性を認識し、理想とするゴールの姿を明確にしたら、実現するためのシナリオを作成しましょう。数年前まで不可能だとされていたシナリオも、可能にするITテクノロジーがすでに開発されている可能性が十分にあります。シナリオを描いたら、DXプロジェクトを遂行する手段や道具であるITテクノロジーを見極めましょう。

AIやIoT、サブスクリプションモデルやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)など、どのツールを使うか検討する方法からはじめると、DXの本質を見失うので注意が必要です。ITテクノロジーで業務効率を上げる、という発想だとテクノロジーを使うことが目的になり、ベンダーにシステムの刷新を丸投げする事態になりかねません。一緒になってシステムの刷新を実施してくれる伴走型のベンダーを探すことも、DXを失敗しないでうまく導入する方法のひとつです。


DXの導入に成功した例を4つ紹介

ここでは、DXの導入に成功した例を紹介します。紹介する成功例は、以下の4つです。

  • ベネッセコーポレーションの通信教育DX
  • スマート農業
  • 住宅設備シミュレーター
  • アパレルDX・オムニチャネル化

ベネッセコーポレーションが推進する通信教育DX

2014年4月に、通信教育の進研ゼミに専用タブレットを導入したベネッセコーポレーション。政府が実施する大胆な教育改革が、このベネッセコーポレーションの通信教育DXをさらに推し進めています。英語4技能(聞く/話す/読む/書く)を評価する新たな入試制度に対応した英語教材「1分スピーキングアプリ」の開発がその好例です。個性的なキャラクターがさらに児童の意欲や弱点などを見える化するなど、教育のIT化が、ますます進むことが予想されています。

スマート農業

農林水産省による「スマート農業」の定義は、「ロボット技術やICT等の先端技術を活用し、超省力化や高品質生産等を可能にする新たな農業」です。無人で動くスマートトラクターや除草剤散布を支援する無人ボートの開発、センシングデータと気象データからぶどうの品質を向上させたり、ドローンとAIを組み合わせて農薬散布量の削減を実現したりするなど、さまざまな成功例が報告されています。

住宅設備シミュレーター

リビング空間、玄関空間など各種部屋のカラーや部材をイメージできる、シミュレーターが登場しています。住宅設備事業を手がける会社が提供しており、ドアや収納、床、壁、天井、階段などすみずみに至るまで、消費者は心ゆくまでコーディネートを自由に試せるのがポイント。リアルタイムでさまざまな組み合わせを確認したら、お気に入りを高画質な画像で保存・印刷ができるほか、発行したURLをメールやSNSでかんたんに共有できます。顧客と工事を請け負う工務店との間で、より円滑なコミュニケーションが可能になり、業務効率と顧客満足度の両方が高まる好例です。

アパレルDX・オムニチャネル化

新型コロナウイルス感染対策のステイホームが影響し、業界を問わず実店舗への客足は鈍化しています。アパレル業界が活路を見出しているのが、店舗スタッフの接客力を活かしたアパレルDXです。成功のカギは、販売につなげる顧客とのコミュニケーション。オンラインでコーディネートの提案、SNS、LINEやライブ配信するといった方法を取り入れ、EC・店頭などオムニチャネル化した販路で売り上げるというものです。

コーディネートコンテンツ経由で売り上げた場合、コーディネートを投稿した店舗スタッフの実績としてEC売上高が見える化するのがポイント。顧客満足度と、実績の見える化でモチベーションの向上につながっています。


変革を恐れず、新しい価値を創造しよう

今回は、DXの定義や導入方法、成功例を解説しました。

DXの本質とは、データ活用をおこない、ITテクノロジーを使って人々の生活を豊かにしていくことです。今まで常識だと思っていた企業活動や意識を根本から変革させることで、新しい価値を生み出すことが求められる時代になりました。

DXを導入するために、どのようにすれば、情報・お金・人・モノの交換や移動が、快適に進むのか考えてみましょう。達成したい理想の姿を明確にした上で、実現化のシナリオを描いてから、最適なITテクノロジーを見つけ出すことが大切です。

ライター
Mistyrose